製品メーカーのサーキュラーエコノミー型ビジネスの実現~広域認定制度の活用~

電子機器やEV(電気自動車)などに欠かせない金属資源の需給が今後、世界的にひっ迫する可能性があることを背景に、国内にある資源の使用効率を高めるため、国は再資源化事業等高度化法や改正資源有効利用促進法の施行を通じて、サーキュラー・エコノミー(循環経済)への移行を加速させようとしています。このような社会の動きを背景に、企業価値の向上と新たなビジネス機会の創出を目的に、サーキュラーエコノミー型ビジネスの実現に向けて舵を切る企業が増えつつあります。本コラムでは、製品メーカーによるサーキュラーエコノミー型ビジネス実現の手法の1つである、広域認定制度について解説します。

~目次~
広域認定制度とは?
広域認定制度活用による製品メーカーのメリット
自社製品の回収・循環事業によって実現するCEのイメージ例
産業廃棄物広域認定の申請に向けた準備

 

広域認定制度とは?

自分以外の他者が廃棄する使用済み製品の収集運搬や処理(分解、リユース用の部品取り、再販のための加工、素材としての再生処理工程等を含む)を行うには、地方自治体が交付する廃棄物を扱うための許可を取得することが廃棄物処理法で義務付けられています。たとえ自社が製造・販売したものであっても、またサーキュラーエコノミーへの移行という公共の利益のためであっても、製品メーカーが廃棄物を扱うための業の許可を得ずに、使用済みの自社製品をユーザーから集めて処理や加工をすることは禁じられています。

このルールを飛び越えて、製品メーカー等が使用済み製品を広域的にユーザーから回収してリユース・リサイクル等をすることを可能にするのが広域認定制度です。具体的には、自社のどの製品をどの地域のユーザーからどれくらいの量を集めて、誰が運搬し、どんな施設で、どのような工程で処理をするのかを含む詳細な計画を練り、その計画について国の審査を受ける制度です。 環境大臣の認定を受けた範囲内においては自治体の交付する廃棄物の収集運搬、中間処理、最終処分を行うための許可が免除されます。

広域認定制度の対象品には、「産業廃棄物」と「一般廃棄物」 の2種類がありますが、ここから先は、産業廃棄物の広域認定制度に絞ってお話しします。

環境省の公開情報によると、産業廃棄物の広域認定事業は236件(2025年11月19日時点)あります。これら広域認定事業による回収対象品は、繊維製品、情報処理機器、通信機器、自動二輪車、コンクリート、断熱材、石膏ボード等の建材、梱包材、電池、蓄電システム、住宅設備機器、太陽電池モジュール、マットレス等と実にさまざまです。幅広い分野の製品メーカーが広域認定制度を利用していることが判ります。

環境省 産業廃棄物広域認定制度の認定状況
https://www.env.go.jp/recycle/waste/kouiki/jokyo_1.html

 

広域認定制度活用による製品メーカーのメリット

サーキュラーエコノミーの促進という視点において、製品メーカーは、環境配慮型の製品設計だけでなく、シェアリング、リペア、リファービッシュ等のサービス、再生材の製品原料としての使用等、資源効率を最大化するための複合的なビジネスの設計が求められます。しかし広域認定制度を利用しないケースでは、ユーザーが製品を「不要」と判断すると、製品は産業廃棄物処理業者に引き渡されます。 その使用済み製品を焼却処分するのか、埋立処分場に運ぶのか、もしくはリユースまたはリサイクルするのかを、製品メーカーは管理することが出来ません。

一方で、製品メーカーが自ら、製品の回収・循環モデルを構築して広域認定を受ければ、再生材の利用が容易になるという利点があります。第三者が作った再生材を市場から調達するのに比べて、自社製品をリサイクルして得る再生材を製造工程に戻す方が、再生材の質と量をコントロールしやすくなります。これにより、調達コストの削減や原料品質の安定化が図れます。

そのような自社製品の循環促進のための積極的な取組みは、サプライチェーンの下流におけるCO2排出量削減、製品価値の向上、ESG評価の向上などに繋がります。

 

自社製品の回収・循環事業によって実現するCEのイメージ例

広域認定制度を利用すると、製品メーカーが自社製品のライフサイクルの下流部分を計画、管理することによって、例えば下図の例のようなサーキュラーエコノミー型製品やサービスの実現が可能です。

 

産業廃棄物広域認定の申請に向けた準備

自社製品の回収・循環事業計画の策定には、詳細な検討と計画が不可欠です。製品の特徴に応じた回収方法や再生手法を選定し、協力事業者との調整を重ね、運用コストの試算や社内体制の整備など、多岐に渡る準備が必要です。例えば、再生手法の検討段階においては、中古品としてリユース市場に出せるのか、もしくは部品だけなら自社でリユース可能なのか、それとも、リユースには適さないので製品をまるごと素材としてリサイクルするのか、リサイクルならどんな手法が良いのか等が検討項目になります。加えて、事業計画は廃棄物処理法のルールに則って作成する必要があります。

「サーキュラーエコノミーへの転換を視野に自社製品の回収・循環事業を始めたいが、どこから着手すべきかわからない」、「広域認定申請に向けて準備を始めたが、なかなか思うように進まない」 等のお悩みをお持ちの企業様にとって、計画策定を確実に且つ迅速に進めるには、社外専門家の活用が有効手段の1つです。当社リーテムは、認定申請に向けた準備プロセスを効率的に進めるための支援コンサルティングを行っています。ご関心のある企業様は是非いちどお問合せください。

最後に本コラムの内容を1枚にまとめたニュースレターを添付しますので、ご参照ください。
ニュースレター_2025.12

 

令和7年12月23日
株式会社リーテム
サーキュラーエコノミー推進部
杉山 里恵
(図)加藤 翠

 

リーテムのサービスのご紹介

広域認定申請支援サービス

https://www.re-tem.com/service/circular-support/

太陽光パネル再資源化サービス

https://www.re-tem.com/service/solar-panel/

 

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