「水銀」に関する規制、法改正動向

今回のコラムは、2013年10月の外交会議で採択された「水銀に関する水俣条約」を受けての
水銀使用製品の製造規制動向(水銀環境汚染防止法)と、
その水銀含有製品が廃棄される際の取扱い(廃棄物処理法)での
今後の動き、予測される動きも含めて、簡単に解説します。

水俣条約では、水銀の使用用途についての制限、並びに水銀廃棄物の環境上適正な方法での管理が求められています。
これを受けて、今回、水銀環境汚染防止法で水銀使用製品の製造を規制し、今後は、廃棄物処理法で水銀廃棄物の取扱いを定めていくという動向。

水銀廃棄物についてもう少し詳しく解説しますと、日本国内では、水銀を含むばいじん・汚泥等は、廃棄物処理法に従い処理されていますが、金属水銀は有価物として取り扱われているのが現状。
今後は、水俣条約で締結した2020年の製造、輸出入の禁止に伴い、2020年以降は、有価物であっても今回法改正で定義されたように特別管理廃棄物になるものと推測されます。
(この今後の動向は、あくまでも推測される動向であって、今回の法改正には関係ありません。この法改正以降も有価物として取り扱われるのであれば、現行のように廃棄物処理法の適用外となります。)

では、続いて、今回法改正される予定の水銀環境汚染防止法と、水銀に関する廃棄物処理法の改正予定点を簡単に紹介します。

水銀使用製品の製造に関する規制(水銀環境汚染防止法)

今回改正される予定の水銀環境汚染防止法では、基本的には、水銀を使用しての製品の製造は禁止されるものの、以下の特定水銀使用製品については、大臣の許可を受けて製造することができる、ことになる予定です。

1.電池
2.スイッチ及びリレー
3.コンパクト蛍光灯、電球型蛍光灯
4.直管形蛍光灯
5.高圧水銀ランプ
6.冷陰蛍光灯、外部電極蛍光灯
7.化粧品
8.薬剤
9.気圧計
10.湿度計
11.圧力計
12.温度計
13.血圧計

(この13品目は単純に解りやすくの表記であるため、それぞれただし書きや括弧書きがありますことご了承くださいとともに、ご注意願います。)

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◇環境省、「水銀による環境の汚染の防止に関する法律施行令案等」に関するパブコメ(お知らせ)
http://www.env.go.jp/press/101400.html

水銀廃棄物の今後の動向(廃棄物処理法)

今回の法改正は、これまでも汚泥系の特管であったりと、特別管理廃棄物には変わりはないのですが、水銀又はその化合物が廃棄物となったものについては、
「特別管理一般廃棄物」及び「特別管理産業廃棄物」とすることと定義したこと、これが今回の一番の法改正となります。

この法改正の意味としては、今回はそれほど意味をもたないかもしれませんが、今後、2020年の水銀の輸出入禁止に向けて、また水俣条約を踏まえて「特別管理廃棄物」に適用させるような準備、という位置づけでもあるものと考えられます。

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◇環境省、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令、規則の一部を改正する政令案」に対するパブコメ(お知らせ)
http://www.env.go.jp/press/101392.html

 

この他にも、大気汚染防止法なども一部改訂されるなど、環境法令の今後の動向にも注視していく必要があるものと思われますので、合わせてご確認されることをお勧めします。

また、それらの改正が整った際には、本コラムでできる限りの情報を提供させていただきますので、引き続きご愛読いただければと思います。

平成27年9月30日
株式会社リーテム
法務部
坂本裕尚
(図)池田翠