廃食品横流し事件のその後

この度、ある月刊誌にダイコー社による食品廃棄物の横流し事件を受けての対応に関する記事を執筆することになり、さらに別件で名古屋に出張がありましたので、愛知県庁に取材を行ってきました。
本コラムではそのさわりを少々紹介します。

<事件前>の愛知県の対応

・昨年から周辺住民からの異臭の苦情により、6回ほど立入検査を実施
・異臭の原因は、処理後の製品の臭気とのダイコー社からの回答があり、現場確認で終わった

<撤去について>の愛知県の対応

・ダイコー社の許可取消ではなく、許可を残して、「改善命令」による廃棄物の撤去を義務化させる
・ダイコー社の3人の担当者が現場で対応し、排出事業者による撤去の誘導等を行う

ダイコー社の処理の実態

・飼料化と堆肥化の処理設備を有するが、堆肥化の処理設備は1㎥/日の処理能力
・味噌などの塩分の高いものなど、廃製品の大半は倉庫もしくは野積みで不法投棄状態
・堆肥化や飼料化ができる廃棄物、総搬入量のごく一部だけを処理
・マニフェストは搬入日から起算して、(処理の有無にかかわらず)2週間程度で排出事業者に返送されるようなずさんなマニフェスト管理

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(この敷地は、ダイコー社が処理業の許可を受けていた敷地ではなく、ダイコー社の他の敷地だと思われる。)

 

筆者の考える再発防止策

今回のダイコー社のような処理業者は、今後ないことを願うばかりなのですが、どうしても処理業界の構造上の問題から、このように不適正に処理しがちであることは否めないところがどうしてもあります。
なぜなら、「処理しなければしないほど、処理業者の利益になるから」などの理由により。

環境省でも、電子マニフェスト強化などによる再発防止策を検討していますが、それは果たして有効なのでしょうか。筆者はいろいろな立場の方と、この話をよくするのですが、多くの方はこの方法ではまだ簡単に偽ることが可能(なので、なかなか再発防止にはならないのではないか、との意見がとても多いです。
では、どうすればよいか・・。
それは、行政の負担となってしまうかもしれませんが、以下の対応が可能であれば、とも思われますがいかがでしょうか。

・処理業者から行政に報告される処理実績の「数値」と、
・排出事業者からのマニフェスト交付報告の「数値」との付け合わせ

この両方の数値に大きく矛盾があると、それは横流しという可能性が見てとれるのかなと考えます。

今回のダイコー社の堆肥化の施設であれば、1㎥/日の処理設備であるので、前者の処理業者から行政に報告される処理実績の数値は最大でも365㎥/年(堆肥化分)になるはずであり、後者のマニフェスト交付報告の委託実績は当然それよりも過大に多くなるはずですので、少なくともこのダイコー社の横流しはこの方法であれば見抜けるものと考えられます。

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また、先週のニュースで、愛知県が撤去を開始したとのニュースもありましたので、こちらも合わせてご確認いただければと思います。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160602-00000006-mai-soci

また冒頭の記事が月刊誌に掲載された際には、本コラムでもご案内させていただきます。

平成28年6月6日
株式会社リーテム
法務部
坂本裕尚
(図)池田翠