海洋プラスチック廃棄物問題

猛暑が続いています。お子さんのいるご家庭では、海やプールに出掛ける方も少なくないでしょう。今月は、海というキーワードで気になる問題のひとつ、Plastic Ocean(=廃プラスチックで汚染された海)を取り上げます。

目を覆いたくなるような海洋汚染の写真を見かけることがありますよね。深刻な環境問題の一つとして長い間指摘されていますが、7月初めに米大手コーヒーチェーンのスターバックスが使い捨てプラスチックストローの使用禁止を発表するなど、今年に入り、世界各国で脱プラスチックの動きが起きています。

 

海洋プラスチック問題ってなに?


人間が捨てた廃プラスチックが沿岸部や海に流出し、生態系の破壊や人体への健康被害、沿岸部の経済社会へのダメージ等を引き起こしている問題のことです。2015年に学術誌サイエンスが発表し、国際機関や各国政府もその統計を基準としている海洋プラスチック廃棄物の量は、なんと年間800万トンです。改善されずに今の状態が続けば2050年には、漂う廃プラスチックが海に生きる生き物を上回るようになるとも言われています。

 

世界の海洋プラスチック廃棄物の9割は、わずか10の河川から流れ込んでいる

これらの廃プラスチックは、いったいどこから海に流れ込んでいるのでしょうか。
ドイツの研究プロジェクトによると、海に流出している廃プラスチックのおよそ9割が、わずか10の河川から流れ込んでいるそうです。

この研究で、流域で適正に処理されていない廃棄物(廃プラスチックだけに限らない)が多いほど、河川から海に流出する廃プラスチックの排出量が増えることが明らかになりました。

 

 

日本と米国が署名しなかった「海洋プラスチック憲章」

今年6月9日にカナダで開催されたG7シャルルボワ・
サミットで、海洋プラスチック問題、気候変動による海面上昇、高潮リスク等を含む7つの問題に対応するため世界各国に具体的な対策を促す「健康な海洋、海、レジリエントな沿岸地域社会のためのシャルルボワ・ブループリント(計画)」が採択されました。さらに英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダの5カ国とEUは、自国でのプラスチック規制強化を進める「海洋プラスチック憲章」に署名しました。

ところが日本と米国は署名していません。さらに米国はブループリント(計画)についても、「気候変動に関わるものは留保する」と宣言しました。日本政府は今回海洋プラスチック憲章に署名しなかった理由として、プラスチックごみを削減するという趣旨には賛成しているが、国内法が整備されていないため、社会に影響を与える程度が現段階でわからず署名できなかったと説明しています。

しかし、 G7サミットで、海洋プラスチック問題を扱うのは今回が初めてではなく、2015年のドイツで開かれたG7サミットでは、海洋プラスチック問題に対処するアクションプランが定められ、2016年G7伊勢志摩サミット、2017年のイタリアでのG7タオルミーナ・サミットでも再確認されているそうです。欧州に比べて日本の対応が遅れたということになりますが、四方を海に囲まれた国土を持つ日本国民として恥ずかしさを覚えます。

 

世界の廃プラスチック削減の取組み

世界のさまざまな国や地域、また企業が既に具体的な取り組みをはじめています。日本では一般廃棄物(家庭からでるごみ)に含まれる廃プラスチックについては、容器包装リサイクル法、家電リサイクル法、小型家電リサイクル法といった法律のもとに、回収・リサイクル処理する仕組みがあります。レジ袋削減については、エコバック利用促進が民間の活動としてありますが、法律にはなっていません。その他プラスチック製品のメーカーに対し、再生可能な素材利用の定量目標を義務付ける法律もまだありません。

 

他国に遅れはしていますが、環境省が発表した第四次循環型社会形成推進基本計画(2018年6月19日閣議決定)には、「マイクロプラスチックを含む海洋ごみの対策」が含まれています。リサイクルの高度化だけでなく、発生の抑制にむけて、政府から具体的なガイドライン等が出されるのかどうか気になるところです。

 

編集後記

日本ではまだ、具体的な法規制は決まっていませんが、世界の脱プラスチックをビジネスチャンスと捉える国内の動きもあります。例えば製紙会社による飲み物や食べ物に溶けない紙ストローや紙容器の大量生産の計画や、企業による海や土の中で自然に分解されるプラスチック素材の開発などです。この問題をきっかけにした新ビジネスや新しい法規制など、今後の動向にアンテナを張ろうと思います。

 

最後に本コラムの内容を1枚にまとめたニュースレターを添付しますので、ご参照ください。
ニュースレター_2018.8

 

 

平成30年8月15日
株式会社リーテム
サスティナビリティ・ソリューション部
杉山 里恵
(図)加藤 翠

 

リーテムのサービス紹介

リサイクルマネジメント請負サービス

リサイクルマネジメント請負サービス

広域認定運用リスク診断サービス

広域認定運用リスク診断コンサルティング