欧州で先行している、製品づくりに再生材の利用を求める動きを受けて、日本では2024年5月に、資源循環分野の新しい法律が公布されました。それは、再資源化事業等高度化法(正式名:資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律)です。国内の資源循環を質と量の両面において高度化させて、産業競争力のアップと、温室効果ガス排出量の削減などに繋げることを目的としたものです。この新法により、廃棄物処分業者には、廃棄物の再資源化事業の高度化に向けた取組みと、再資源化状況の開示が求められ、製造・販売事業者には自社製品への再生材の利用に向けた動静脈連携の取組みが期待されます。
~目次~
・資源循環に関する新法策定の背景
・新法における廃棄物処分事業者の責務
・再資源化事業等の「高度化」のための判断基準とは?
・再資源化事業等高度化法で創設される3つの認定制度
資源循環に関する新法策定の背景
2023年7月に欧州委員会は、「新車の製造に使用されるプラスチックの25%にリサイクル材を使用すること、そのうち25%は、廃車部品からリサイクルしなければならないこと」等を定める規制案を発表しました。これは、自動車の車両設計から生産、廃車までのライフサイクルにおける資源循環を促進することが狙いです。日本政府は、自国の資源循環の促進が遅れれば国の経済成長の機会を逃す可能性が高いと考えています。
また日本では、2024年8月に第5次循環型社会形成推進基本計画が発表されました。循環型社会形成推進基本計画とは、循環型社会の形成を総合的に進めるための国の計画のことで、概ね5年毎に見直しが行われます。この第5次循環型社会形成推進基本計画では「循環経済への移行」が、国家戦略として明確に位置付けられました。循環経済の推進によって、環境面のみならず、産業競争力の強化や経済安全保障、地方創生など、幅広い分野の解決に繋げよう、という視点が盛り込まれています。
新法における廃棄物処分事業者の責務
新法では、一般廃棄物、産業廃棄物の処分業の許可を持つすべての業者と、自ら処分を行う排出事業者は(※埋立処分業者、海洋投入業者を除く)、再資源化事業等の高度化への取組みと、再資源化の実施状況の開示が責務となります。また、廃棄物処分業者のうち、前年度の産業廃棄物の処分実施数量が10,000トン以上ある事業者、及び前年度の廃プラスチック類の処分実施数量が1,500トン以上ある事業者は、「特定産業廃棄物処分業者」に定義され、国への廃棄物処分実績値の年次報告が求められるという案も公表されました。
再資源化事業等の「高度化」のための判断基準とは?
国は廃棄物処分業者に対して、“高度化”に向けた取組みとして具体的にどんなことを期待しているのでしょうか。今年9月27 日に開催された、再資源化事業等高度化法を策定するための専門家による小委員会で、廃棄物処分業者が取組む際に指針とすべき「判断基準」の案(省令案)が示されました。
判断基準の案(省令案)を読むと、製造業のニーズを満たす高品質な再生材を供給できるようになるための技術開発や、高効率かつ省エネ型設備への投資など、廃棄物処分事業者は、決してたやすくない取組みを期待されていることが判ります。
静脈産業の脱炭素型資源循環システム構築に係る小委員会(第8回)資料を基に筆者編集
再資源化事業等高度化法で創設される3つの認定制度
新法によって、企業の取組みを後押しするための認定制度が創設されます。認定を得ると廃棄物処理法に基づく廃棄物処分業等の許可や施設設置許可が免除されるという制度で、国は、申請件数の目標を3年間で100件としているようです。認定の類型(イメージ)の一つは、製品の製造・販売事業者向けの認定で、二つ目は、廃棄物処分業者が申請することを想定したものです。三つ目は、すでに廃棄物処理施設を有している事業者が設備を高効率化する場合を想定した認定です。
編集後記
新しく創設される認定制度によって、製造事業者や排出事業者が再資源化事業に参入することが想像されます。既存の廃棄物処分事業者の中には、従業員の高齢化、若手人材が定着しない、後継者問題など様々な経営課題を抱える企業は少なくないと思いますが、国の示す高度化のための判断基準は、なかなかハードルの高い内容です。日本の廃棄物処理・リサイクル産業は今後どうなっていくのか、数年後に国の目指す高度化がどこまで進むのか、業界内外の多くの人が関心を寄せていることと思います。
最後に本コラムの内容を1枚にまとめたニュースレターを添付しますので、ご参照ください。
ニュースレター_2024.10
令和6年10月31日
株式会社リーテム
サーキュラーエコノミー推進室
杉山 里恵
(図)加藤 翠
リーテムのサービスのご紹介
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