読み解く!廃棄物処理法(9) ~優良認定事業者~

今回のコラムでは、制度施行から約1年半経過した「優良産廃業者認定制度」について、筆者の知り得る情報で検証してみたいと思います。
また、本コラムの情報は、排出事業者の目線での情報も数多く含んでおりますし、処理業者の目線での経験談も含めていますので、ぜひともお読みいただければと思います。

優良認定事業者数

検証に先立って、現在認定されている認定業者数を見ていきますと、全国で約10万の処理業者(収集運搬業者、及び処分業者)がいる中で、平成24年7月末時点で382の事業者しか優良認定を受けていないという状況です。

◆産廃情報ネット
http://www.sanpainet.or.jp/

優良認定事業者とは…(排出事業者の目線で解説)

では優良認定事業者とはいったいどのような事業者なのかを以下の表で纏めてみます。しかし、これらの情報はもうすでに見慣れすぎている感があるため、それが排出事業者にとってどのような効果をもたらすのかも含めてみていきます。(表右列)

認定される要件

内容

排出事業者目線

実績と遵法性

過去5年間、廃棄物処理法、浄化槽法などの不利益処分を受けていないこと

法令違反が5年以上なく、処理実績があることが認められた業者

事業の透明性

以下の情報のインターネットでの6ヵ月間以上の公開、及び定期的な更新
・法人の基礎情報
・許可内容
・施設の維持管理状況
・産業廃棄物の処理状況等の情報 など

・処理業者は他業界と比較して、情報をオープンにしたがらないと言われている業界の中で、積極的に情報を開示しているまじめな業者

・処理実績などを公開しているので、その業者が安定操業しているのか、施設の維持管理はどうなっているのかがネットでも見てとれる

環境配慮の取り組み

ISO14001、エコアクション21などの認証を受けていること

環境配慮に気を配っている業者

電子マニフェスト

電子マニフェストの利用が可能であること

電子マニフェストが利用可能なので、マニフェスト交付等状況報告の手間が省ける

財務体質の健全性

財務体質の健全性に係る次に揚げる基準に適合していること
a)自己資本比率が10%以上であること
b)過去3ヶ年の経常損益の合計額に過去3ヶ年の減価償却額の合計額を加えて得た額が、0円以上であること
c)法人税、社会保険、労働保険などに未納がないこと

・財務体質が健全であるため、その処理業者での不適正処理、不法投棄のおそれがとても少ない業者であることが推測できる

優良認定事業者になるために(処理業者の目線を基に排出事業者への影響を解説)

排出事業者の皆様にとって、前述の事業の透明性の中での情報公開はそんなにたいしたことではないと思われがちですが、これらの情報公開はその数も多いことや、その情報も定期的に更新しなければならないので、これができている業者は他の処理業者と比較しても、社内での管理体制が整っている会社であることが言えるものと思われます。

では、この管理体制が行き届いている会社が排出事業者にとって何をもたらすかと考えますと、管理体制が行き届いているが為に廃棄物の処理も適正に管理し処理していることが推測されるため、安心して処理委託できる処理業者と言えるのではないでしょうか。

 

次に優良認定事業者のメリット、並びに優良認定事業者へ処理委託する排出事業者のメリットについても解説していきます。

優良認定事業者のメリット

このメリットについてももうすでに見慣れていますので、補足がある箇所だけ付け加えさせていただきます。

メリット

補足

許可の有効期間が7年間に延長
(通常は5年の許可更新)

許可更新時に手数料とのことで8万円ほどかかりますので、それが7年間になることで経費が削減され、もしかしたら処理費用も下がるかも。。。

許可証に優良認定マーク

どうでもいい情報ですが、この優良マークは法改正の際に行われるパブリックコメントで、筆者がコメントしたことによりこの優良マークが付されました。

許可申請時の添付書類を一部省略可能

財政投融資による優遇措置
(日本政策金融公庫の低利融資)

優良認定事業者に処理委託する排出事業者のメリット

排出事業者へのメリットとして、以下のようなことがあげられます。

メリット

補足

自治体の条例等で定めている県外産業廃棄物の県内処理業者への委託の際の「事前協議」が省略
(すべての自治体ではない)

この「事前協議」は全国で111の自治体が許可権者となっていますがその中の約半数が導入している制度です。首都圏では、不法投棄されているとして常に全国の中でも上位にいる千葉県や茨城県、埼玉県などがこの事前協議を導入しています。この中で茨城県などは優良認定事業者への処理委託であれば事前協議を省略できるとされています。

主に中部地方の自治体の条例等で定めている処理委託前の処理業者への「実地監査」が省略
(すべての自治体ではない)

この「処理委託前の実地監査」は愛知県や豊橋市などで規定されていますが、優良認定事業者への実地監査については省略できるものと規定されています。

※この「事前協議」と、「実地監査」を規定している自治体の詳細な情報については、次回以降のコラムで紹介いたします。

優良認定事業者かを調べる方法

優良認定事業者については、各自治体のホームページ上のどこかに載っている場合もありますが、すべての自治体がホームページに載せているわけではないものと思われますし、なかなか見つけにくいので、以下の産廃情報ネットで、今現在処理委託している処理業者が優良認定されているのか、検索されてはいかがでしょうか。

◆産廃情報ネット
http://www.sanpainet.or.jp/

その業者が優良認定を受けているのであれば、以下のような色で表示されますので、一目瞭然でわかるものと思われます。

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その他、優良認定事業者を検索する方法

環境省の優良認定事業者を推進する取り組みの中で、「優良さんぱいナビ」がこの春から運用が始まりました。ただし、今現在の登録事業者数はわずか118社とまだまだ少ないという状況なためこのサイトの活用はこれからだと思われます。
(弊社も登録はこれからになります。)

◆優良さんぱいナビ
http://navi.ikashigen.go.jp/

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以上、優良認定事業者に関する情報でしたが、産廃振興財団のニュースでは、本制度について以下のように紹介しております。
・本制度は「排出事業者責任」をより確実に果たすための重要なツールである。
・処理業者を探すときは、本制度を活用して比較吟味したことのわかる選定過程を社内文書で管理し保存しておくことが望まれる。
(産廃振興財団ニュース№64、23頁引用)
http://www.sanpainet.or.jp/publication/doc/no064.pdf

また、環境省の通知(平成23年2月4日環廃産発第110204002号)でも、以下のように紹介しています。
・優良認定を受けた処理業者に処理委託している場合、優良認定業者が公表している産業廃棄物の処理状況や施設の維持管理の状況に関する情報を見て、処理が適正に行われていることを間接的に確認する方法も考えられる。

このように排出事業者としては、優良認定事業者への処理を委託する場合には、様々なメリットもあることながら、排出事業者責任の一部も担保できるということもメリットがさらに加わることになるものと思われます。

日本全国ではまだまだ不法投棄等のニュースが絶え間なく報道されておりますので、このような優良事業者を推進する取り組みをさらに促進させ、優良認定事業者に処理委託する際の排出事業者へのインセンティブなどもさらに加速させ、適正処理の推進につながることを願うばかりです。

(本コラムの著作権はリーテムに帰属しており、リーテムに無断で転用・転載することはできません。)

平成24年10月15日
株式会社リーテム
マネジメント推進部
坂本裕尚