2024年4月24日に、「対応を迫られる自社製品の広域認定取得に向けて、申請準備をスピードアップするためのヒント ~目標設定から再資源化の計画づくりまでリーテムに相談できること~」というセミナーを株式会社リーテム主催で開催しました。その講演内容のポイントについてご紹介します。
広域認定制度とは?その重要性と活用方法
広域認定制度とは、メーカーが市場に販売した製品が使用済みになった際、全国規模でこれを集めてリサイクルやリユースする計画を立て、国から認定を受ける仕組みです。環境保護と資源の有効利用に大きな役割を果たします。この制度を活用することで、本来なら求められる廃棄物の運搬や処理に関する地方公共団体の許可が免除され、メーカーが自社製品の回収とリサイクルに自ら関わることができます。
もし広域認定を取得しない場合、市場に出た自社製品がどこでどのように処理されるかはメーカーの手を離れ、不明瞭になります。使い終わった製品がリサイクルされるか、焼却処分されるか、あるいは埋め立てられるかは分からず、メーカーはその過程に関与できません。しかし、広域認定を取得すれば、メーカーは自社製品の回収とリサイクルに直接関わることができ、リサイクル率の向上や廃棄物処理の質の向上にも寄与できます。
さらに、広域認定制度を利用して自社製品のリサイクルを効果的に推進することは、自社製品のライフサイクル全体での環境負荷の低減と資源の有効利用に繋がります。よって、メーカーによる自社製品のリサイクルへの積極的な関与は、持続可能な社会の実現に貢献する有効な手段であると言えるのです。
自社製品のリサイクルでカーボンニュートラルな社会の実現に貢献
資源循環とは何を意味するのでしょうか。資源循環という言葉の意味と、国の方針、企業が自社製品のリサイクルに取組むメリットをご紹介します。
資源循環とは、一度使用された製品を再利用したり、修理したり、リサイクルによって新たな製品の材料として活用する仕組みを指します。従来のサプライチェーンは一方通行の流れであり、製品が使用され廃棄されるまでの過程で多くの資源が無駄になっていました。これに対して、サーキュラーエコノミー(循環型経済)とは、製品を修理して使い続けたり、中古品として別の誰かがリユースしたり、1つの製品を他者とシェアして使ったりし、それらが難しくなった最期にはリサイクルすることで資源を出来るだけ長く使おう、そういう視点によるビジネスモデルを増やして経済を発展させようというものです。なぜならサーキュラーエコノミーは、CO2排出量の削減や天然資源の枯渇を防ぐことに繋がるためです。
国は、こうしたサーキュラーエコノミーの推進を後押ししています。欧州では再生材の利用が拡大しており、日本もその流れに追随しようとしています。環境省は、リサイクルやリユースの枠を超えた高度な資源循環を進める必要があると強調しており、新たな法律として「資源循環高度化法」を制定し、企業が自社製品のリサイクルに積極的に関与することを求めています。この法律は、メーカーが製品の回収とリサイクルを積極的に進めることを支援し、資源の自給率向上やCO2削減など多くの効果を期待しています。
企業にとっての資源循環のメリットは3つあると考えられます。第一に、脱炭素化が挙げられます。製品のライフサイクル全体で発生するCO2排出量の削減は、社会的責任を果たす重要なステップです。特に、製品廃棄時のCO2排出量を管理することで、サプライチェーン全体のCO2削減に寄与できます。
第二に、投資家からの評価向上があります。資源循環に積極的に取り組む企業は、持続可能性を重視する投資家から高く評価され、企業価値の向上に繋がります。例えば、リサイクルが難しくて従来は焼却処分されていた製品について、メーカーが自らリサイクルシステムを作ることで、他社との差別化を図り、競争力を高めることができます。使用済み電子タバコの回収はその一例です。
第三に、再生資源の利用が容易になる点です。第三者が作った再生資源を市場から調達するのに比べて、自社製品をリサイクルして得る再生資源を製造工程に戻す方が、再生資源の質と量をコントロールしやすくなります。これにより、調達コストの削減や原料品質の安定化が図れます。
以上のように、自社製品の資源循環への取り組みは企業にメリットをもたらし、カーボンニュートラルな社会の実現に大きく貢献します。
自社製品回収を成功させるための広域認定スキーム構築法
ここからは、自社製品回収における広域認定スキームの全体像を説明します。
広域認定スキームとは、企業が市場に販売した製品を使用後に回収し、リサイクルやリユースするための計画全体を意味しています。スキームの基本的な流れは、製品の製造・販売から始まり、使用済み製品の回収、リサイクル・処分、再資源化、そして自社製品の製造での利用や市場への販売という一連のプロセスです。製造販売事業者が申請者として広域認定スキームを構築し、使用済み製品を効率的に循環させる仕組みを設計します。
環境省資料より
広域認定スキームの構築には、いくつかのつまづきポイントがあります。どこから着手すべきかがわからないという声が多く聞かれます。申請の準備期間や認定後のオペレーションにかかる費用が見積もれず、予算を立てにくいという声も聞きます。特に、廃棄物やリサイクル分野の経験の無い方が広域認定の申請を担当する場合、戸惑いが大きくなることが想定されます。
広域認定スキームの構築には、詳細な検討と計画が不可欠です。製品の特徴に応じた回収方法やリサイクル手法を選定し、協力業者との調整を重ね、コスト試算や社内体制の整備を進めることで、実現可能な計画の策定が出来ます。
構築に向けた具体的な流れとしては、まず回収対象の製品を決定し、目標を設定することから始めます。次に、認定取得後のオペレーションを自社単独で行わないケースでは、協力事業者を探します。具体的には、処理業者や運搬業者の選定です。
リサイクル手法の検討では、中古品としてリユース市場に出せるのか、もしくは部品だけなら自社でリユース可能なのか、それとも、リユースには適さないので製品をまるごと素材としてリサイクルするのか、リサイクルならどんな手法が良いのか、というようなことが検討項目になります。製品を構成する素材には、樹脂や金属、ガラスなど、多くの種類が考えられます、またバッテリーが含まれる製品もあるでしょう。それぞれの製品の特徴に適した処理が求められます。
この他にも、検討して決めなければならないことが色々あるため、申請準備には時間がかかります。同業他社が先行して認定を取得している、または取引先から認定の要望を受けているようなケースでは、メーカーは、申請に向けた準備をスピードアップしたいとお考えでしょう。
広域認定の申請準備をスピードアップするためのヒント
広域認定申請に向けて準備中だけれど、なかなか思うように進まないとお悩みの方、またこれから申請の準備を始める方に、広域認定の申請準備をスピードアップするためのヒントをご紹介します。
広域認定スキームの構築には、資源循環に関する幅広い情報収集と知見、また、廃棄物処理法や環境規制などの法律知識が必要です。また、使用済み製品の回収や運搬、リサイクル業務の費用、そして環境省への年次報告のための実績管理に係る人件費などの、認定後のオペレーションコストを見積もっておく必要があります。スキーム構築を確実に且つ迅速に進めるには、社外専門家の活用が有効な手段です。
リーテムのコンサルティングサービスは、認定申請に向けた多岐に渡る準備プロセスを効率的に進めるための強力な支援を提供します。リーテムは資源と廃棄物の分野で長年の実績を持ち、初期の検討から事前調査、協力業者の選定まで、企業のニーズに合わせてカスタマイズしたサポートを提供しています。
リーテムは東京と茨城に工場を持つ廃棄物リサイクル事業者であり、今年で創業115年目を迎えます。創業以来、自社工場で使用済み製品をリサイクルし、素材原料メーカーに質の高い再生資源を提供してきましたが、近年では、メーカーが使用済の自社製品を再び自社の素材として再利用する「水平リサイクル」にも注力しています。また、リーテムのコンサルティングチームは企業のサーキュラーエコノミーへの取り組みを支援するため、広域認定申請ご支援サービスを提供しています。
製品の製造・販売に携わる企業の皆様におかれましては、ぜひリーテムのコンサルティングサービスを活用いただき、自社製品の回収・リサイクルスキームの構築の成功と、広域認定のスムースな取得を目指していただければと思います。
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株式会社リーテム
サーキュラ―エコノミー推進室