中国への廃プラ輸出の道が絶たれ、第三国への廃プラ輸出の道に期待される中、汚れた廃プラはバーゼル法規制対象となることが決まりました。待ったなしの廃プラ対策が求められる現在、6月末に開催されるG20大阪サミットを前に廃プラに関する動きが活発です。
汚れた廃プラがバーゼル法の輸出規制対象に
4月29日からスイスで開かれていたバーゼル条約第14回条約国会議(COP14)で日本とノルウェーによる共同提案が採択され、リサイクル資源として扱われる汚れた廃プラがバーゼル条約の規制対象になることが決まりました。条約改正の発行は2020年1月です。
汚れや他のごみの混入が「ほとんどない状態」のものを除いて、廃プラの輸出には輸入国政府の同意が義務付けられるので、汚れた廃プラ、未選別の廃プラを国外へ持ち出すことは実質上困難になります。日本が現在輸出している年間約100万トンが規制対象になる可能性があります。
COP14の様子(画像 IISD Reporting Services)
環境省が自治体へ事業系廃プラの焼却を要請
事業系廃プラの国内の焼却施設、リサイクル施設がオーバーフローの状態にある一方で、自治体が所有する一部の焼却施設は稼働率が低く、事業系の廃プラを焼却する余力があるとされています。このため環境省は、緊急避難的に事業系廃プラの処理を市区町村に要請することを決めました。受け入れた自治体には財政支援のほか、処理費用の徴収が認められます。
ただし受入れるかどうかは自治体の判断に委ねられています。小池都知事は、家庭ごみの処理に影響が出る可能性があるため、東京都施設での受け入れは厳しいとの見解を示しています。他地域の市町村でも周辺住民の反対等を懸念して要請に応じないケースが少なくないだろうとの声があります。もともと温暖化対策から「脱焼却」の方向に向けて既に動いてる自治体もあります。今後どの自治体が受入方針を示すのか、またどの様な条件なら受け入れてもらえるのかが、排出者にとって関心のあるところでしょう。
サーマルリサイクルからマテリアルリサイクルへ
中国の廃プラ輸入規制の以前に日本が国外輸出していた廃プラの50%以上が中国向け(香港経由も含む)でした。この内の約8割は事業系の廃プラとされています。そのことは、家庭ごみ由来の廃プラよりもマテリアルリサイクルに向いているものが約8割である、と言い換えられるかも知れません。そのような観点から、廃プラの資源リサイクルは大きな成長が見込めるビジネス分野として国内外の関連企業や投資家に注目されています。
例えば株式会社プラニック(出資、豊田通商株式会社、ヴェオリア・ジャパン株式会社、小島産業株式会社)は、欧州の技術を採用した、日本最大級のプラスチックリサイクル工場の2021年稼働を目指しています。ミックスプラスチックを金属とプラスチックに分け、樹脂の種類毎に選別した後にコンパウンド(※)して、原料として再資源化するそうです。
また環境省は、プラスチック資源循環システムの実証事業を公募するなど、国のプラスチック資源循環戦略に基づいて、企業による廃プラの省CO2型リサイクルの促進を強力に後押ししています。
※コンパウンドとは、原料樹脂に顔料や添加剤等を混ぜ合わせることで、品質を調整すること。
出典:(一社)プラスチック循環利用協会
最後に本コラムの内容を1枚にまとめたニュースレターを添付しますので、ご参照ください。
ニュースレター_2019.5
令和元年5月24日
株式会社リーテム
サスティナビリティ・ソリューション部
杉山 里恵
(図)加藤 翠
リーテムのサービス紹介
資源リサイクルチェーンマネジメントサービス
https://www.re-tem.com/service/service_list/resource-chain/