資源循環高度化法案を読み解く

欧州で先行している、製品づくりに再生材の利用を求める動きを受けて、日本ではいま、資源循環分野の新しい法律づくりが進められています。それは、「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」で、国内の資源循環を質と量の両方において高度化させて、産業競争力のアップと、温室効果ガス排出量の削減などに繋げることを目的としたものです。この新法により、一部の産業廃棄物処分業者には、廃棄物の再資源化状況の報告や公表が求められ、製造・販売事業者には自社製品の高度な資源循環への積極的な取組みが期待されるようになります。

 

資源循環に関する新法案の背景

欧州を中心に世界では、再生材の利用を求める動きが拡大しています。例えば、昨年7月に欧州で、「新車の製造に使用されるプラスチックの25%にリサイクル材を使用すること、そのうち25%は、廃車部品からリサイクルしなければならないこと」等を定める規制案が発表されました。環境省は、日本の資源循環の促進が遅れれば国の経済成長の機会を逃す可能性が高いとして、「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」(=以下、「資源循環高度化法」という)の案を策定し、3月24日に閣議決定となりました。今後、この法律案は国会で審議されます。

 

資源循環高度化法の概要と「高度化」の意味すること

資源循環高度化法の制定の狙いは、日本の資源循環の質と量の高度化によって、1)温室効果ガス排出量を減らすこと、2)資源循環産業の競争力を高めること、3)資源循環産業の成長を地方創生に繋げること、4)資源の自給率を向上することです。

法案の内容には、1)資源循環の高度化に向けた基本方針を決めること、2)資源循環の高度化の基準を決めて公表すること、3)特に処分量の多い産業廃棄物処分業者に再資源化の実施状況の報告及び公表を求めること、4)資源循環の高度化に向けた認定制度を創設することなどが盛り込まれています。

ところで資源循環高度化法の「高度化」の定義は何でしょうか? 新法案の条文からは「廃棄物の再資源化にともなって排出する温室効果ガス(GHG)の削減効果が増大すること」と読めます。

法案条文 衆議院ホームページより
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g21309060.htm

 

資源循環高度化法で創設される3つの認定制度

新法の施行が決まったら、資源循環の高度化に向けた民間企業による取組みを後押しするための認定制度が創設されることになります。認定を得ると廃棄物処理法に基づく廃棄物処分業の許可や施設設置許可が免除されるそうです。認定の類型(イメージ)として下図の内容が公表されました。類型の一つは、製品の製造・販売事業者向けの認定で、二つ目は、廃棄物処分業者が申請することを想定したものだと推察できます。三つ目は、新法が定める条件に適合した廃棄物処理施設を設置する事業者を対象にした認定です。三つ目の「廃棄物処理施設を設置する事業者」には、製品の製造・加工・販売事業者と、廃棄物処分業者のどちらも対象になり得ると推察します。

※上記は、環境省ウェブサイト掲載情報から筆者が推察した内容です。法案成立後の内容に変更が起きている、または筆者の推察と異なる可能性があることにご留意ください。

環境省ウェブサイト
https://www.env.go.jp/content/000208833.pdf

 

編集後記

資源循環高度化法案は、新たな認定制度の創設に目がいきがちですが、新法案に書かれた、「資源循環の高度化の基準」には、リサイクル工程から出るGHG排出量を減らすための設備導入や運用改善、またリサイクル率の目標設定及び達成に向けた計画づくりが含まれています。既存の廃棄物処分業者は、認定を目指さないとしても、従来以上の取組みが求められることになる点も見逃せません。この法案の行方を追いかけようと思います。

最後に本コラムの内容を1枚にまとめたニュースレターを添付しますので、ご参照ください。
ニュースレター_2024.4

令和6年4月24日
株式会社リーテム
サーキュラーエコノミー推進室
杉山 里恵
(図)加藤 翠

 

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