知らないと怖い産業廃棄物の不適正処理

産業廃棄物の不法投棄の新規判明件数は、環境省の公表によるとピーク時の平成10年代前半に比べて大幅に減少しているものの、不法投棄や不適正処理の事例は後を絶ちません。直近の公表データ(環境省令和3年度統計)によると年間131件もの不適正処理が発覚しています。

 

不法投棄と不適正処理の違いは?

“不法投棄“とは、読んで字のごとく、法で定めた場所でないところに廃棄物を捨てる行為です。では”不適正処理”とは何を意味するでしょうか。環境汚染と人の健康被害を防ぐため、事業活動で出た産業廃棄物は、廃棄物処理法と都道府県や政令市のルールの基準に則って扱われなければなりません。産業廃棄物を保管する時、排出事業者が他者に処理を頼む時、廃棄物の処理を行う時等、廃棄物の発生から最終処分が完了するまでの一連の流れについての細かな基準が、法、規則、条令、要綱等に定めらています。これらの基準を守らずに廃棄物を扱う行為全体を指して“不適正処理”と呼んでいます。つまり、“不法投棄”は不適正処理の一つということです。

 

不適正処理の罰則

不適正処理が発覚すると、その内容に応じた罰則の対象になります。例えば、不法投棄、不法焼却、とそれらの未遂罪の罰則は、個人の場合で5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはその両方、法人の場合は3億円以下の罰金です。排出事業者が、廃棄物の許可を持たない相手に産業廃棄物や一般廃棄物の運搬や処分を委託する行為は“委託基準違反”に該当し、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科されます。この他に、法で定めた契約をせずに産業廃棄物を委託する行為や、マニフェスト伝票の交付をせずに産業廃棄物を委託する行為にも厳しい罰則があります。

 

 

廃棄物処理の許可取消処分

廃棄物の収集運搬や処分を行うには、廃棄物処理法にもとづいて都道府県や政令市の許可を受ける必要があります。許可を得た廃棄物処理事業者による深刻な不適正処理が発覚した場合には、許可が取り消されることもあります。産廃情報ネット(※備考)には、産業廃棄物処理業の許可、産業廃棄物処理施設の設置許可の取消処分の情報が公表されています。このうち、昨年の6月初めから今年の5月末までの1年間を見たところ、その期間だけで産業廃棄物と特別管理産業廃棄物の収集運搬または処分の業の許可や、施設設置許可の取消し処分を受けた事業者は約140社(取消し件数は245件)にのぼっています。

産廃情報ネット(運営:公益財団法人 産業廃棄物処理事業振興財団)
https://www2.sanpainet.or.jp/

 

不適正処理は誰にでも起き得る?

廃棄物の法令違反は悪徳産廃業者のすることだから、自分の会社には無縁の話だと誤解されることがありますが、必ずしもそうとは限りません。法律の基準を知らない、あるいは正しく理解していないために、知らず知らずのうちに不適正な運用を繰り返していて、ある日突然、行政指導を受けたり、罰則が適用される事態になる、ということが排出事業者にも、真面目な産廃事業者にも起き得ます。そのため、日頃から廃棄物処理法や関連する条例等を知り、実務上どのような運用が求められるのかを学ぶことが、法令違反のリスクを減らすことに繋がります。

 

 

編集後記

廃棄物処理法の第12条7項では、“事業者は産業廃棄物の最終処分が終了するまでの一連の処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない”とされています。これは“排出事業者責任”の一部です。ですが、その適正処理の実施のための廃棄物法令上の(廃棄物処理法、条例、要綱等)ルールは多岐にわたっていることや、解釈が難しい条文等もあり、なかなか全てを把握・理解するのは大変です。当社では、企業の廃棄物管理ご担当者向けのオンライン研修・対面研修サービスを提供しています。ご関心のある方は下記URLにアクセスなさってみてください。

最後に本コラムの内容を1枚にまとめたニュースレターを添付しますので、ご参照ください。
ニュースレター_2023.6

 

令和5年6月30日
株式会社リーテム
サーキュラーエコノミー推進室
杉山 里恵
(図)加藤 翠

 

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