国連未来サミット(Summit of the Future)が、2024年9月22日から23日までニューヨークにて開催されました。そこで採択された国際社会の具体的な行動指針を示した「未来のための協定」については、一部の国から内政干渉に繋がりかねないとして反対の声もあがるなどしており、国際社会の分断が注目されています。しかしながら、本来の目的はSDGsの達成のためのグローバルガバナンスの強化であり、軍備削減等の項目の他に、気候と環境に関する項目もあることをご存知でしょうか。
~目次~
・未来サミットの背景
・国際社会で気候変動にどう向き合うのか
・日本の主張は?
未来サミットの背景
2020年、国連は創設75周年を記念して、地球規模の課題への対応や国際協力について話し合う機会として、未来サミットを開催することを決めました。未来サミットは、2023年の「SDG サミット」を足掛かりに開催され、そこで行われた多くの提案は、2030年までのSDGsの達成を目指すための国際協力の手段を改善するものでした。これら提案をとりまとめたものが「未来のための協定」であり、一部の国からの反対があったものの、未来サミットの成果として採択されました。
内容は、以下の5つの項目ごとに合計56の行動(action、以下アクションという)を設定するものです。
参考:https://www.unic.or.jp/files/our-common-agenda-summit-of-the-future-what-would-it-deliver_J.pdf
「未来のための協定」の構成
1.持続可能な開発と開発のための資金調達
2.国際の平和と安全
3.科学・技術・イノベーションとデジタル協力
4.若者および将来世代
5.グローバル・ガバナンスの変革
参考:https://www.un.org/sites/un2.un.org/files/sotf-pact_for_the_future_adopted.pdf
▲「未来のための協定(Pact for the Future)」の表紙
国際社会で気候変動にどう向き合うのか
「未来のための協定」は、5つの項目から構成され、それぞれにおいてアクションの内容が示されています。すべてのアクションは、We willからはじまる文章で、国際社会の全体としての意思を示しています。
その中で注目したいものが、「持続可能な開発と資金調達」の9番目と10番目のアクションです。
Action 9. | We will strengthen our actions to address climate change. |
アクション9 | 気候変動への取組を強化します。 |
Action 10. | We will accelerate our efforts to restore, protect, conserve and sustainably use the environment. |
アクション10 | 環境の回復・保護・保全、そして持続可能な利用のための努力を加速させます。 |
特にアクション9は、「我々は、気候変動への取組みの進捗が現在遅々としていることを深く懸念する。」とはじまり、気候変動による影響は途上国が強く受けるであろうことを問題視しています。その上で、2030年までに再生可能エネルギー容量を世界全体で3倍にすることや、途上国に対する無償資金援助などを行うことが記載されています。
日本の主張は?
未来サミットには、岸田内閣総理大臣も参加し、演説を行いました。国際の平和と安全のために国連安保理改革が必要であると強く訴えたほか、人間の尊厳を守るために貧困や気候変動への対策で国際的な協力を進めることを呼びかけました。
■岸田内閣総理大臣の演説(抜粋)
御列席の皆様、世界が歴史の転換点にある中、現在と未来の世代のため、我々は「行動(actions)」をとらなければなりません。(中略)貧困、気候変動をはじめとする複合的危機には、どの国も一国では対処できず、国際協力が不可欠です。人間の尊厳は、全ての国際協力の出発点です。2030アジェンダの「誰一人取り残さない」との精神の達成に向け、改めて見つめ直されるべきものです。(中略)世界中の人類が国際社会の未来のために声を上げている今こそ、国際社会が責任を共有し、真の連帯を実現する機会です。国連が果たす役割は増しています。国際社会は、デジタル・AI(人工知能)など、新たな可能性、機会や、リスクも共有しています。人間一人ひとりが自らの可能性を発揮し、より良い未来を実現できるよう、世界の指導者は、多国間主義の名の下に結集しなければなりません。国連に対する日本のコミットメントは揺らぐことはありません。
参考:https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/statement/2024/0922speech.html
編集後記
「未来のための協定」の中では、気候変動の対策が進んでいないこと、先進国と途上国との間に取組のための資金の差があること、気候変動の影響は途上国が強く受けることなどが現状の課題として記載されました。先進国のこれまでの経済発展による環境への負荷のしわ寄せを途上国が受けているという構図があるのではないかと、個人的には感じ取りました。
岸田内閣総理大臣は、先進国として途上国を支援するとは明確には言及しませんでしたが、「誰一人取り残さない」ために国際協力が不可欠だと演説しています。
11月11日~22日には、アゼルバイジャン共和国・バクーにて「国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)」が開催されます。日本は、温室効果ガスの削減目標達成のため、どのような方策をとるつもりなのか、また、途上国への支援の具体的な内容について触れるのかどうか等々、注視することは多くありますが、それを踏まえて我々企業や地域がなすべきことを考えていきたいと思っています。
最後に本コラムの内容を1枚にまとめたニュースレターを添付しますので、ご参照ください。
ニュースレター_2024.9
令和6年9月30日
株式会社リーテム
CE推進室
本間 蓉子
(図)加藤 翠
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