読み解く!廃棄物処理法(7) ~行政指導と刑事罰~

前回のコラムで行政指導、行政処分、書類送検などの罰則関係の適用ということで、次回以降のコラムで紹介しますと申し上げましたので、今回のコラムではそれらの刑事罰や行政罰について紹介させていただきます。

行政指導、行政処分の流れ

各自治体の行政において、廃棄物事犯を捉えたとき、排出事業者に対しては「行政指導」、処理業者に対しては「行政処分」となるケースが多いものと思われます。
(これらの行政指導、行政処分は以下の行政手続法により行われます。)

◇行政手続法
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/gyoukan/kanri/tetsuzukihou/tetsuzukihou.html

zu15

では、廃棄物処理法では排出事業者責任を強く求めているのに、どうして排出事業者には行政指導という指導レベルが多いのかと言いますと、ただ単純に、排出事業者は処理業者と異なり、業の許可を受けていないため、処分することは簡単にはできないとのことにより、行政指導止まりとなっている例が多いものと思われます。

一方、処理業者は、各自治体から許可を受けており、行政の立場から見ると処理業者に許可を与えていますので、行政は簡単に処理業者に対して行政処分を下すことができます。
また、処理業者の中には悪質な業者がまだまだ多くいるため、それらの業者を排除するためにも行政処分による許可の取り消しなどはまだまだ多くあります。(行政処分の件数は減らないどころか6~7年ほど前と比較して、およそ2倍に増えております。)

◇行政処分の例…業の許可の取り消し、90日間の事業停止、30日間の事業停止など
(行政処分は、行政が証拠を集めた後、弁明の機会や、聴聞などを経て処分内容が決定されます。)

刑事処分の流れ

例えば不法投棄などはその土地の所有者などからの通報により警察が動くという流れになります。また、その警察から検察への書類送検(※)により、以下のような刑事罰が科せられます。

◇刑事訴訟法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO131.html

zu3

◇刑事罰の例…
・不法投棄…3億円以下の罰金、もしくは5年以下の懲役
・無許可業者への委託…1,000万円以下の罰金、もしくは5年以下の懲役
・契約書の未締結…300万円以下の罰金、もしくは3年以下の懲役

※書類送検された場合、そのほとんどが新聞に掲載されてしまいます。
新聞に掲載された場合、企業にとってのリスクは想像以上に大きいものであると思われます。(社会的信用の失墜ブランドイメージの失墜企業イメージダウンなどなど)

行政(指導)から刑事罰へ

前述の行政処分の説明で、排出事業者に対しては行政指導が多いと紹介させていただきましたが、その指導に従わない場合や、行政がこの事案は刑事罰の必要性があると認識した場合には、行政から警察への告発等により、前述の刑事処分の流れに移行されるケースもあります。
全て告発しているのかは実務の面があるため不明確ですが、行政の立場からすれば、刑事罰に該当する行為を認識した場合は、原則警察に告発ないし報告するのではないかと思われます
(筆者は最近はこの流れによる書類送検が多くなっているような気がします。)

zu5

時効

◇行政処分の場合…時効なし
→ゆえに、自治体は過去の事案についても行政処分を行うことが可能となります

◇刑事罰の場合…時効あり
→法定刑が10年未満の懲役については、5年の時効
5年未満の懲役、罰金については、3年の時効

◆具体的仮定事例
これは約半年前の乳製品メーカーでの不法投棄事案でしたが、工場敷地内のマンホールにヨーグルトを不法投棄したというケースを、仮に過去4年前のケースだとして考えてみた場合、罰金刑については時効になりますが、懲役刑については、その時点では時効とはなっていないという不思議なことになります。
今回の乳製品メーカーの不法投棄事案は、約半年前に報道されており、直近のこととして報道されておりましたので、おそらくは、罰金も課せられるものと推測されます。

両罰規程

廃棄物処理法の罰則は、両罰規程と呼ばれ、法人格の会社に対してはもちろんのこと、その廃棄物管理を担当していた担当者に対しても同様の罰則が適用されます
これは実際に、何年か前のビジネスホテルチェーンの不法投棄事案でも、担当者10名に対して、それぞれ10万円の罰金との情報もありましたので、両罰規程は実際に行われております。

以上のように排出事業者としては、何らかの不適正事案が起きてしまったときに、行政指導レベルで済んでくれればまだよいものと思われますが、そのタイミングや行政によって、いつのまにか書類送検されてしまったり、刑事罰が下されたりということも実際に行われていますので、廃棄物管理に関しての取り扱いは十分に注意されてはいかがでしょうか。

(本コラムの著作権はリーテムに帰属しており、リーテムに無断で転用・転載することはできません。)

平成24年8月17日
株式会社リーテム
マネジメント推進部
法務G
坂本裕尚