読み解く!廃棄物処理法(8) ~建設廃棄物~

今回のコラムでは、産業廃棄物の発生量がダントツで多く、各自治体の解釈もマチマチで、多岐に渡る法律を確認しなければならないという「建設廃棄物」について、取り纏めてみましたので紹介させていただきます。
また、基本的な情報から、建設廃棄物の取り扱いにおけるリスクヘッジの観点も含めておりますので、建設工事の発注者、請負者になりえる事業者の方々はぜひお読みいただければと思います。

建設廃棄物の排出事業者は誰?

廃棄物処理法では、建設廃棄物の排出事業者として、建設工事を発注者から直接請け負った「元請業者」が排出事業者になるものと定められています。
(廃棄物処理法 第21条の3 第1項)

建設廃棄物とは…(廃棄物処理法上の定義)

次に、廃棄物処理法で定める建設廃棄物の定義を紹介します。それに先立って、どの建設工事から発生した廃棄物を「建設廃棄物」と呼ぶのか、つまり建設工事の「定義」をここで簡単に整理してみます。(ここが少々やっかいです。)

廃棄物処理法で定める建設工事の定義

◆建築物その他の工作物の全部又は一部を解体する工事
(廃棄物処理法 第21条の3 第1項)

環境省通知(環廃対発第110204005号 平成23年2月4日廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律等の施行について)で定める建設工事の定義

◆土木建築に関する工事であって、広く建築物その他の工作物の全部又は一部の新築、改築、又は除去を含む概念であり、解体工事も含まれること
(本通知、第十六 建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理責任を明確化するための措置)
http://www.env.go.jp/recycle/waste_law/kaisei2010/attach/no110204005.pdf

従い、「建設廃棄物」とは、2番目の環境省通知の方が詳しく書いてありますので、そちらをかみ砕いて整理しますと、以下のとおりとなります。

・土木建築工事であり
・建築物や工作物の
・新築工事
・改築工事
・解体工事
から発生する廃棄物、となります。

このように、法律では定義付けされていますが、ある自治体の見解は以下のとおりとなります。

建設廃棄物とは…(ある自治体の見解)

ある自治体の廃棄物対策課によると、以下のとおりの見解とのことです。

◆上記の廃棄物処理法で定義している以上の建設工事から発生する廃棄物
◆具体的には、建物に付いている電気器具の交換工事や、塗装工事、内装仕上げ工事、原状回復工事など、建設業28業種などの建物に関する工事が該当する

法律と自治体の見解の相違

さて、困りました(@_@;)
法律にも遵守しなければならない、また各自治体の見解にも従わなくてはならないとのことで、悩まれる方もおられると思いますが、このような場合は、各自治体の見解に沿って運用しなければなりません。
(図で表すと以下のとおりです。)

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この表にもあるとおり、国は法律を制定、改定しますが、法律の運用、排出事業者や処理業者等への指導、処分等は各自治体に委ねられておりますので、各自治体の見解に従わなくてはなりません。

(参考までに各自治体の許可権者の一覧については、以下の前のコラムをご覧いただければと思います。)
https://www.re-tem.com/ecotimes/column/haikibutsusyorihou_2/

では何が建設工事となり、どの建設工事について元請業者が排出事業者になるのか(参考)

上記の理由により、一概にはどの建設工事の廃棄物について、元請業者が排出事業者になるのかというのはいうことは、各自治体の判断によりますので、なんとも申し上げられませんが、筆者のこれまでの知見上、前述のある自治体の判断基準が多くの自治体で採用しているものと思われますので、この判断基準は参考になるかもしれないとのことでご紹介させていただきます。

判断基準
◆建物の躯体に付いているものに関する工事

◇具体例◇

建設工事には該当しないもの 建設工事に該当するもの
・電球の交換だけであれば建設工事ではない ・電気器具ごとの交換工事であれば建設工事に該当
・機械設備のメンテナンスであれば建設工事には該当しない ・建物に付いている機械設備ごとの交換工事であれば建設工事に該当

 

この自治体の見解は筆者の知見上、他の自治体でもこのような見解を出されているのが多いものと思われますので、この見解をもとに、各個別案件に当てはめて建設工事に該当するのか否か考えられてはいかがでしょうか。

(※繰り返しになりますが、この判断基準は、ある自治体の見解ですので、すべての自治体の見解ではないこと、ご承知おきください。)

リスク回避の手段(参考情報)

では、これらのことは頭では理解できたものの、実際の”現場”でこのような判断をしているかどうかは、それぞれの現場担当者や、営業担当者などが実務を行いますので、なかなか末端まで周知できないのが現状ではないかと思われます
そのようなことを想定して、社内に以下のような仕組みを取り入れることにより、リスクが少しでも減るのではないかということで提案させていただきます

工事の発注者

①工事請負契約の締結 ・工事を発注するが、廃棄物を排出する事業者とならないことが想定できる場合には、必ず工事請負契約を締結する

・その工事請負契約の中に、工事を請け負った元請業者は責任をもって排出事業者責任を全うすることと雛形に記載しておく

②工事竣工時の確認項目に廃棄物の適正処理を確認 工事の竣工時の確認項目内に、廃棄物の適正処理の確認項目を追加し、実際に元請業者に廃棄物の処理状況を確認し、その内容を記録しておく

工事の請負業者

前参考情報のところで、機械設備のメンテナンスは建設工事には該当しないと、ある自治体は見解を出していることを申し上げましたが、よくある事例として、メンテナンス工事との扱いで、もともとの発注者の所有物である廃棄物の処理まで請負業者に請け負わせている例がよくあります。
発注者、請負者との力関係で、どうしても請負者が発注者の廃棄物の処理をしなければならないということが往々にしてあります。このような場合、上記のある自治体の見解を相手方に申しても営業上の側面から立場的に弱いためなかなか言えないものです。

そのようなときは、以下の対応をされてはいかがでしょうか。

①工事請負契約の締結 ・必ず工事請負契約を締結する・その工事請負契約の中に、工事を請け負った元請業者が責任をもって排出事業者責任を全うすることと雛形に記載しておく
②排出事業者責任を全うする

・リスク回避のために、排出事業者としての処理責任を全うする

・どうしても自分の廃棄物と認めたくなく、ついつい廃棄物の処理をおろそかにしがちですが、何かあった場合には、当然に責任を問われることになってしまうため、たとえ自分の廃棄物ではなくとも、契約上やマニフェスト上に排出事業者となった場合には、廃棄物が適正に処理されたかをいつもどおり確認する

 

以上のように、建設廃棄物については、その処理責任があいまいになりがちであること、処理費用も高いこと、などいろいろあり、廃棄物を管理する上で難しいところが往々にしてあります。

一方、不法投棄などの不適正事案については、やはり建設廃棄物がその全体量の3/4を占めていることもありますので、やはり廃棄物を出す側がそれぞれ責任をもって処理を委託すること、この基本的なことがやはり必要になるものと考えます。

今回のコラムは建設廃棄物を排出する側の管理、リスク回避の手段ということで、社内の仕組みに取り入れることの提案型コラムとなりましたが、どの企業でも採用できるのではないかの考えにより提案させていただきました。

しかし、これを行っていれば問題ないということではありませんので、ご承知おきください。

 

<参考までに>
◆建設業28業種
http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000081.html
(国土交通省)

 

次回以降のコラムでは今回紹介できなかった「建設リサイクル法」について、誰が、何を、いつ行うのかなど取りまとめてご紹介させていただきたいと思っております。

(本コラムの著作権はリーテムに帰属しており、リーテムに無断で転用・転載することはできません。)

 

2012年9月14日
株式会社リーテム
マネジメント推進部
法務G
坂本裕尚