食品廃棄物の不適正な転売事案の再発防止策について

環境省より「食品廃棄物の横流し事案に対する再発防止策(案)」が、この度、発表されました。今回のコラムでは、この案に対する筆者の考えや、各自治体での対応など、悪意を持った処理業者の横流しをどのように予防するのか、はたまた本当に予防することができるのかについて、少々筆者の意見も含めて紹介します。

そもそも、この横流しなど「どうして産廃業者はやってしまうのか?」などについては、前回のコラムで紹介しておりますので、お読みいただければと思います。
https://www.re-tem.com/ecotimes/column/yokonagashi/

このような横流しする悪意のある処理業者は、きっとまだまだ多くいることでしょう。なぜなら、前回のコラムのとおり、廃棄物処理業界の構造上のところにも起因しますので、どうしてもそのように考えてしまう会社は出てきてしまうのでしょう。

今回発表された環境省の再発防止策を簡単に紹介します。

◇電子マニフェストの機能強化

・委託量と処分量が一致しない場合、不正を検知できるシステムの導入を検討

◇処理業者に係る対策:透明性と信頼性の強化

・監視体制の強化
・処理業者への抜き打ち立入検査などの監視体制の強化
・食品廃棄物の不正転売に係る立入検査マニュアルの策定を検討
・適正処理の強化と人材育成
・処理業者への積極的な情報公開と、排出事業者による現地確認の積極的受入れを求める
・優良事業者の育成・拡大

◇排出事業者に係る対策:食品廃棄物の転売防止対策の強化

・食品リサイクル法における食品関連事業者が取り組むべき措置の指針の見直しを検討
・廃食品が転売することが困難となるよう適切な措置を講じることを要請
・食品廃棄物の不正転売防止のための措置に関するガイドラインの策定

◇環境省、「食品廃棄物の不適正な転売事案の再発防止のための環境省の対応について(案)」について(お知らせ)
http://www.env.go.jp/press/102100.html

 

さて、この再発防止策は、どの程度有効に機能するでしょう?
まず、電子マニフェストの機能の強化ですが、この委託量と処分量が一致している場合は「安心であり、横流し、転売は絶対にない」ということを言い切ることはできないのではないでしょうか。なぜなら、悪意をもった処理業者であれば、簡単に数量の調整が行われてしまいますから。
ただし、この一致、不一致はその会社の管理指標のひとつを見てとれるものとなるものと思われますので、ある程度の効果は期待できるものと考えます。

 

denshiinfo

次に、処理業者に対する透明性と信頼性の強化については、今回の事案によって、処理業者への信頼性が損なわれておりますので、当然このような動きになるでしょう。マジメな処理業者にとってはつらいものです。。

排出事業者に対する食品廃棄物の転売防止の強化については、一つ目の食品リサイクル法で対応されることが望ましいのでしょうね。また、このような動きを受けて、食品ロスが減ることを期待したいところです。
ただ、この環境省案の「廃食品が転売することが困難となるよう・・」というのは、具体的には物理的破壊等を行ってから処理業者に処理委託するということになると、これはなかなか難しいものと思われます。おそらくは努力義務になるのではないかと思われますが・・。

 

以上が、平成28年2月16日に環境省より発表された再発防止策に対する筆者の意見などですが、国である環境省としては、(国と自治体の役割からして)このくらいの規制にならざるを得ないのではないでしょうか。あとは、許可権者である自治体の動きや、条例等での規制を注視していこうと思います。

また、環境省の要請で全国の自治体が食品の廃棄物を扱う全国の1800の施設に立ち入り検査を行った結果、食品の横流しの不正はいずれも確認されなかったと、環境省が15日に発表しております。
以下は横浜市のサイトですが、これをもって「横流しは絶対にない!」とも言い切ることはできないものと思われます。なぜなら、自治体の立ち入り検査は、書類上のところでの検査が主となりますので、ここでも悪意をもって書類改ざんが行われていたら行政も見抜くのはとても難しいのではないでしょうか。

当社としては、処理業が主たる事業でもありますので、処理業者が考えそうな悪いこと、悪意のある処理業者を見抜くコツをつかんでおりますので、もし読者の会社で「処理業者の監査を依頼したい」という方がいらっしゃいましたらご連絡いただければそのご支援をさせていただきます。

今回の件は、処理業者の信用性を著しく低下させたこと、廃棄物を資源循環させるのではなく市場に再流通させたことなど、排出事業者の信頼を裏切ることを行ったということで、とても憤りを感じております。そのような悪意のある会社を少しでも減らすお手伝いができればということで少々紹介させていただきました。

 

末筆ながら、この環境省の再発防止策や、各自治体の立ち入り検査について、筆者はそれを否定しているわけではありませんので、そこは誤解のないように付け加えておきます。環境省や各自治体はそれぞれできることは最善を尽くしているものと思われますので、あとは排出事業者である皆さんの会社が、廃棄物処理法で定める排出事業者責任を全うしていく、ということがやはり必要ではないでしょうか。

 

平成28年2月18日
株式会社リーテム
法務部
坂本裕尚
(図)池田翠