大手外食カレーチェーンの事件を踏まえて排出事業者としてやるべきこと

最近では大手外食カレーチェーンの事件がニュースを賑わせておりますが、本コラムではこの事件を踏まえて排出事業者として何を行えばよいのか、どうすれば処理業者からの横流しを食い止められるのか、について解説します。

この予防策の話をする前にまず始めに皆さまに認識しておいてほしいのは、「処理業者は完全には信用できない・・」ということです。
処理業者である当社がこれをあまり言いたくないのですが、これはこの事件からも皆さん感じていることと思われますし、以下のとおりそれなりの理由があります。

理由その1 排出事業者から処理業者へ、「モノ」も「お金」も一方通行

廃棄物の処理にあたっては、排出事業者から処理業者の方に、「モノ」も「お金」も一方通行で流れます。このように一方通行で流れるのは廃棄物業界だけではないでしょうか。
一般的なメーカー、例えば、ビール会社であれば、消費者がそのビールの価値分の対価を支払う、というのが通常です。しかし、こと廃棄物となるとそうではなく、その処理費の根拠がよくわからないまま、皆さんは処理業者に処理費用を支払い、廃棄物も渡しているというのが現実なところではないでしょうか。

さて、この一方通行の流れが何を引き起こすのでしょうか。
この一方通行により処理業者が“テキトウ”に処理してしまいがちになるということなのです。処理業者の方は、ついつい「どうせ排出者は見ていないのだからテキトウに処理してもわからないだろう・・」と思ってしまいがちになるのです。
これは構造上の問題なので、このように思ってしまう人もいることでしょう。

twoway

1way

理由その2 廃棄物が売れてしまえば利益UP、0円売却でも処理費用ゼロなので利益UP

処理業者は、皆さん排出事業者から処理費をいただいており、その処理費により処理を適正に行うことができます。しかし廃棄物が世の中的に減少していますので、その処理費も過当競争により抑えられつつあります。

そこで処理業者が考えざるを得ないのが、
・経費を抑えること
・その経費を抑えるのに一番手っ取り早いのが処理費を抑えること
・その処理費というのは作業員の人件費もそうだが、その作業員の処理にかかわる工数を減らすこと
です。
これらにより、その工数のダウンということで、使える・売れる廃棄物はそのまま売ってしまおう、と思ってしまうのです。

今回横流しした処理業者がここまでを考えて横流ししたのか、単純に売れるものは何でも売ってしまえ、ということでのことなのかは不明ですが、処理業者は0円でも売れるものは売ってしまった方がじつは利益が上がるのです。

coco1curry

横流しの予防策

今回の事件は、果たして肥料化の処理業者だからこのような事態になったのでしょうか?筆者は肥料化以外の処理業者でもこのような横流しの可能性は多いにあるのではないかと考えております。食料品以外のモノでも横流しの可能性はあるものと考えます。
また、今回の大手外食カレーチェーンが今後は肥料化の処理業者ではなく焼却業者に委託を変更したとしても、焼却炉に投入される前に横流しされたら同じことです。
ご存じのように処理業者の処理の品質、つまり適正処理の状況は、監査に行ったときにしか「感じる」もしくは「確認」できなく、それも建前のみでの対応をやられてしまうと、なかなか実態が把握できない、というのが正直なところあります。

今回のような事件に巻き込まれないようにするための方法は、選択肢も限られておりますし、監査の強化というのもなかなか限界があるものと思われますが、何かしらの対応、対策を講じなくてはならなく、その代表的なものは以下の方法ではないかと思われます。

① 製品として流通しないように破壊、もしくは横流しできないような状態にしてから処理業者へ委託
② 再資源化報告書など、物理的破壊したという写真の添付などを要求して予防措置を図る
③ 処理する現場に毎回立ち会い
④ ①に近いですが、可能であればパッカー車で運搬してもらう(物理的破壊がややある)
➄ その処理業者の帝国データバンクの信用調査(その会社の方針や社長の性格なども知り得る)
⑥ 監査を強化(プロの目線で監査したり、場合により抜き打ち監査も)

今回の大手外食カレーチェーンは、この中の①と③を選択したと、本日その会社のHP上で発表されております。しかし一般的には①については手間や費用がかかることですし、なかなか現実的ではないのかなと・・。③についてもたまにの搬出であれば対応できなくもないですが、月1などで発生してしまうとなかなか継続が難しくなるのではないかと想像されます。

筆者がお勧めするのは、処理業者の社内管理の状況を確認、という方法をお勧めします。その管理について、よく処理業者と接点を設けているのであれば、その対応状況により、管理面がみてとれるものと思われますが、なかなか接点がないような状況であれば、上記の②の方法などにより、処理業者の対応を確認されてはいかがでしょうか。
(この他にも選択肢はありますが、ここではこれくらいに留めさせていただきます。)

 

今回の事件は、同じ処理業者としても、とても憤りを感じております。今後は、処理業者の信用性の低下も避けられず、処理業者でも適正処理を推進している企業がちゃんとある、ということを広く発信していきたいと考えております。

 

平成28年1月20日
株式会社リーテム
法務部
坂本裕尚
(図)池田翠