排出者が知っておくべき“ヤード規制条例”の背景

「ヤード」とは、囲いのある作業場という意味ですが、資源循環関連の企業では、再生資源を保管する屋外の施設を「ヤード」と呼んでいます。中でも自動車解体や中古車販売に係る資源の保管の場合は「自動車ヤード」、金属スクラップは「スクラップヤード」などということもあります。

近年、このスクラップヤードに関して、不適切な保管によって土壌汚染や悪臭の発生など環境を損なうような営業をしている事例が増え、自治体が新たに条例を定めて規制を行う動きがあります。この“ヤード規制条例”について概要を整理しました。

 

なぜ環境を損なう様なスクラップヤードが増えたのか

以前は、金属スクラップや大型の機器等の再生資源は「雑品」と呼ばれ、海外、主に中国に資源として輸出されていました。これらがバーゼル法の改正により規制対象となり、国内で保管・リサイクルされる物量が増えてきています。

バーゼル法の改正については過去のコラムをご確認ください。

2018.09.25 「10月1日施行 改正バーゼル法」
https://www.re-tem.com/ecotimes/column/2018sep/

2018.10.26 「いま知りたい“スクラップ売却”のこれから」
https://www.re-tem.com/ecotimes/column/2018oct/

屋外で保管しようとする再生資源が、 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下、「廃掃法」といいます)」が定める廃棄物である場合、取扱業者は、処理業の許可を取得する必要があり、廃掃法に従って再生資源の保管・処理を行わなければなりません。また、廃棄物ではなく、有価物(価値があるもの)であっても、これが「有害使用済機器」に該当する場合は、同じく廃掃法によって、取扱業者事業場の届出が求められており、保管のルールも定められています。

 

金属スクラップ等は、有価物にあたり、かつ有害使用済機器でもありませんので、廃掃法の対象には該当しません。よって、スクラップヤードについては、届出を必要とせず、保管方法についても明確な定めがありません。

改正バーゼル法で、国内で保管・リサイクルを必要とする量が増え、スクラップヤードが増えてきています。周辺環境に配慮したヤードがある一方で、敷地外への崩落や火災の発生リスクが高いヤードが、取り締まりを受けることなく営業を続けています。

 

自治体によるヤード規制条例

スクラップヤード等の事業運営を直接規制する法令等がないため、自治体は取り締まりができず、対処に苦慮している状況が続いており、条例によりスクラップヤードの営業を許可制とする自治体が出てきています。

再生資源の定義は自治体によって異なりますが、概ね、金属スクラップ(鉄筋、銅線、配電盤、モーター等)や廃プラスチック製品(水道メーター、廃家電等)となっており、これらを屋外で保管しているヤードについては、囲い・掲示板の設置、排水溝の整備、不浸透素材による底面舗装など、ルールに則した整備を行った上で、届出をして営業するように求めています。

 

ヤード規制条例のない自治体では、ヤード業者とどう付き合えばよいのか

スクラップヤード自体が不適正というわけでばありません。ヤード規制条例がない自治体においても、環境に配慮し、適切に保管をしているスクラップヤードもありますので、現地確認の上、優良業者を見極め取引することをお勧め致します。

あるいは、産業廃棄物処理業の許可を有しており、併せて有価物の買取もしている業者であれば、廃掃法に則った保管を行っていますので、そちらに引取り(買取)を依頼され、かつ、委託先監査を行って有価物の保管状況をお聞きになるのが良いでしょう。

 

編集後記

“ヤード規制条例”は、スクラップヤードの把握と不適正な保管・管理をしているヤード事業者の指導・摘発により、環境汚染リスクを限りなく減らし、かつ、適正に保管・管理をしている優良業者がより営業しやすくなるというメリットがあります。一方で、許可取得には、コンクリート舗装などの底面の整備や油水分離槽の設置などの設備投資が必要で、その維持管理にもコストがかかるため、既存業者の金銭的負担が大きいことが指摘されています。

不適正ヤードは、ヤードの維持管理コストを低く抑えているため、より高価でスクラップを買い付けることができます。不適正ヤードが、条例にて規制されていない地域に移設することで営業を続けることになれば、優良業者の取扱量が減り、結果として、以前よりも環境悪化を招くことになりかねません。自治体のヤード規制条例のみに頼るのではなく、排出者として、適正な業者の選定が求められています。

最後に本コラムの内容を1枚にまとめたニュースレターを添付しますので、ご参照ください。

ニュースレター_2024.3

 

令和6年3月29日
株式会社リーテム
CE推進室
本間 蓉子
(図)加藤 翠

 

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