エアコンの冷媒などに使われる、HFC（ハイドロフルオロカーボン）は、世界で最も普及している代替フロンです。HFCは温室効果ガスであることから、先進国は2036年までに段階的に85%削減すること、途上国は2045年頃までに段階的に80%削減することが、モントリオール議定書のキガリ改正（=2016年10月）で決められています。
代替フロンとは？ フロンとの違いは何か
オゾン層を破壊するフロンガスは「特定フロン」 とされ、国際的に大気放出が禁じられており、段階的に製造が中止されています。 CFC（クロロフルオロカーボン）やHCFC（ハイドロクロロフルオロカーボン）が特定フロンにあたります。
代替フロンとは、「特定フロン」を代替するために開発された、オゾン層を破壊しないフロンです。 代替フロンは、オゾン層を破壊しないものの、CO２の数十倍から10,000倍以上の強い温室効果をもたらします。
代替フロン 日本は 「2030年 32%減、2050年 ゼロ目標」
ご存知のとおり、日本は 「温室効果ガスを2030年までに46%削減（2013年比）、2050年にカーボンニュートラル」を国の目標にしています。「2050年ゼロ目標」と聞くと、多くの人が頭に浮かべるのはCO2の削減だと思いますが、代替フロンについても国の目標があります。
日本は、HFC（ハイドロフルオロカーボン）、 PFC（パーフルオロカーボン）、SF6（六フッ化硫黄ガス）、NF3（三フッ化窒素）の、4種の代替フロンの削減を重要課題と捉えており、2030年までに2013年度比で32％削減し、2050年にはゼロにすることを国の目標としています。(経済産業省、環境省 2021年代替フロン等4ガスの削減対策の発表時点）
代替フロン等4ガスの排出量推移（単位：百万トン CO2換算）
「2022年度温室効果ガス排出・吸収量(概要)」 環境省、国立環境研究所の資料より筆者作成
https://web3.nies.go.jp/whatsnew/2024/20240412-attachment01.pdf
2024年4月に国が公表した2022年度の代替フロン等４ガスの排出量データを見ると、2004年以来年々増加していたHFCは、前年と比べてわずかですが減少に転じています（2021年度比－1.6%)。とはいえ、2013年度比では52.1%増なので、 「2030年までに2013年度比 32％削減」という目標達成にはまだ遠い場所にいます。
世界では、人口増加や、開発途上国の経済発展によって、エアコンの稼働台数や冷凍・冷蔵倉庫の数は増え続けていると言われています。日本に目を向けると、かつてはエアコンが必要なかった北海道でも現在では夏期には猛暑が続いています。エアコンや、食品や飲料類のための冷凍・冷蔵設備は、もはや生活に欠かせないインフラです。代替フロンの更なる削減のためには、自然冷媒などを導入した、GWPの低い（※備考）製品への切替えが求められますが、イニシャルコストが高く、事業者による自主的な導入がなかなか進まないと言う声もあります。
※ GWPとは
地球温暖化係数（=Global Warming Potential）の略で、 CO2が温室効果をもたらす度合を１として、他の温室効果ガスの温室効果をもたらす度合を対比で示した係数のこと
日本の代替フロン削減の施策
前述のような状況を踏まえて、国が掲げている、代替フロン等４ガス削減に向けた施策は次のとおりです。
環境省フロン対策室経済産業省オゾン層保護等推進室
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/chikyu_kankyo/ondanka_wg/pdf/004_04_03.pdf
編集後記
代替フロンを減らすために、消費者ができることはなんでしょうか。冷蔵庫やエアコンを購入するときは、地球温暖化係数を示した「フロンラベル」の表示（JIS＝日本産業規格）を確認し、温暖化対策に繋がる製品を選ぶことです。そのためには、なにより、代替フロンがCO２よりもずっと強い温室効果を私達の環境にもたらしていることを、すこしでも多くの人が認識することが重要だと感じます。
最後に本コラムの内容を1枚にまとめたニュースレターを添付しますので、ご参照ください。
ニュースレター＿2024.6
令和６年６月24日
株式会社リーテム
サーキュラーエコノミー推進室
杉山 里恵
（図）加藤 翠
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