有資格者によるアスベスト事前調査の義務化

2023年10月1日から、建築物の解体・改修工事を行う際には、有資格者によるアスベスト事前調査が義務付けられています。今回は、「工事現場にて適切に事前調査がされているかどうかの確認は、関係各省庁・地方自治体にて実施されているのか」について整理しました。

アスベスト事前調査は必要な知識を有する者に行わせること

解体等工事に伴う石綿飛散防止対策強化の目的で、大気汚染防止法の一部を改正する法律(改正大気汚染防止法)が、令和2年6月5日に交付されました。これにより、解体を伴う工事には規模の大小を問わず使用するすべての建材の事前調査や書面の現場備え付け等が義務付けられています。
本コラムでも、元請業者が実施すべきことをまとめていますので、ご参考ください。

「アスベスト規制強化-元請業者の責務」
https://www.re-tem.com/ecotimes/column/feb2022/

関連して、「大気汚染防止法施行規則等の一部を改正する省令」に基づき、令和5年10月1日からは、建築物の解体・改修工事を行う際には、「石綿に係る事前調査を必要な知識を有する者に行わせること」が義務付けられることになりました。
※建築物以外(工作物)に係る解体等工事の事前調査についても、有資格者にて実施することとする改正が行われ、これは令和8年1月1日から施行されます。

 

 必要な知識を有する者
① 特定建築物石綿含有建材調査者(特定調査者)
② 一般建築物石綿含有建材調査者(一般調査者)
③ 一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て等調査者)
④ 令和5年9月30日以前に(一社)日本アスベスト調査診断協会に登録され、事前調査を行う時点においても引き続き登録されている者。

 

国による実施の確認

国土交通省、厚生労働省、環境省では、都道府県の建設リサイクル法担当部局、環境部局及び労働基準監督署の合同で、“建設リサイクル法等に係る全国一斉パトロール”を実施しています。このパトロールでは、関係行政庁の職員が建設工事現場へ立入り、建設リサイクル法、廃棄物処理処理法、大気汚染防止法、フロン排出抑制法、労働安全衛生法、石綿障害予防規則の観点で、遵守状況の確認、周知徹底、指導等を行います。
環境部局が実施した大気汚染防止法に関する立入件数と行政指導件数の推移は以下の通りです。

 

アスベスト事前調査の確認のための監査や指導はされるのか?

立入件数と行政指導件数が微増であるものの、全国の総解体工事件数を踏まえると、現段階では、アスベスト事前調査を目的とした徹底指導では無いように見受けられますが、環境省のHPによると、これらはアスベスト事前調査の結果の報告や掲示の不備に関する指導が主であるとのことです。
今後も、各省庁の合同でのパトロールの実施により、大気汚染防止法の適正な運用がされているかどうかの確認が継続して行われていくものと思われます。

 

自治体の取組

建設リサイクル法一斉パトロールは、関係部局が合同で実施している所謂強化週間であり、自治体によっては年間を通して徹底した、あるいはより専門的な現地確認を実施しています。
パトロールによる確認項目は、アスベストの適正な取り扱いだけでなく、ミンチ解体をせずに廃建材のリサイクルが可能な様に分別解体を実施しているか、廃棄物の排出計画を立てているか、計画に則って産業廃棄物処理業者と契約を締結しているか、元請業者が現場を把握・管理しているか等々、多岐にわたります。

 

事例1
庁内独自の情報共有システムを構築し、建設工事に係る各種届出を一括管理している。これら届出データの情報から国土地理院地図情報が自動取得され、外部委託のパトロール実施企業に共有されることで、効率よく巡回でき、基本的には全ての解体工事への現地確認がなされている。

 

事例2
解体工事業者の業界団体と自治体職員が協同でパトロールを実施している。看板の掲示などの基本的な確認は自治体職員が行うが、工事現場の作業員へのヒアリングが必要になった際には、業界団体が専門的な知識や現場の知見を基に聞き取りを行う。

 

編集後記

過去には、アスベストの有無を調査せずに元から無いものとして解体工事を行うことで、安価に工事案件を受発注する“不適正業者”により、一般の優良業者の利益が損なわれるという構造が問題となっていました。今後は、安全な解体・改修工事の実施が強化され、さらには建設リサイクル法のパトロールにより、アスベスト事前調査が適正に行われているかの確認・指導が徹底されることと思われます。
元請業者においては、解体工事実施前の現地調査により、アスベスト含有建材はもちろん、建設廃棄物の発生の想定と適正な処理計画の立案、リサイクル率向上のための工夫がますます求められていくと考えられます。

最後に本コラムの内容を1枚にまとめたニュースレターを添付しますので、ご参照ください。
ニュースレター_2024.1

令和6年1月31日
株式会社リーテム
CE推進室
本間 蓉子
(図)加藤 翠

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