軽くて曲がる次世代太陽電池ペロブスカイト

『ペロブスカイト太陽電池』と呼ばれる、薄くて軽量で、曲げることのできる太陽光電池に大きな期待が集まっています。実用化に向けて、世界中で開発競争が行われている次世代型の太陽光電池です。

~目次~
・次世代太陽光電池ペロブスカイトとは?
・ペロブスカイト太陽電池の長所と弱点
・国内メーカーのペロブスカイト関連製品開発の例
・国の期待と支援方針

 

次世代太陽光電池ペロブスカイトとは?

太陽光電池と聞いてイメージするのは、住宅の屋根やビルの屋上に設置する太陽光パネルや、広い土地や堤防などに設置された産業用の大規模太陽光発電設備(メガソーラー)のいずれかではないでしょうか。流通している太陽光電池の多くは、ガラス基板の上に結晶シリコンの膜や、CIS等の化合物の薄膜を重ねて作られています。一方で、近年に開発が進んだのが、ペロブスカイト構造を持った化合物で作られる「ペロブスカイト太陽電池」です。折り曲げやゆがみに強く、さまざまな形状に適用できるため、窓や柱などの曲面への設置が可能です。そのうえ、シリコン系太陽電池のおよそ10分の1ほどの重量のため、電気自動車やIoT機器への搭載や、窓への設置など、従来には無かった活用方法が見込まれています。

ペロブスカイト太陽電池の開発は、桐蔭横浜大学の宮坂力教授(現 東京大学先端科学技術研究センターフェロー)とそのチームによって始まりました。2009年に宮坂教授が発表した論文をきっかけに、世界中で開発競争が繰り広げられています。

2024年7月8日 宮坂力氏の日本学士院賞(ペロブスカイト太陽電池の研究)授賞式
写真左: 天皇皇后両陛下

 

ペロブスカイト太陽電池の長所と弱点

ペロブスカイト太陽電池は、曲がる、軽い、ということ以外にも、長所があります。塗布や印刷によって量産が可能になる点や、主要な原材料であるヨウ素の生産量は、日本が世界シェア30%(世界2位)を占めているため国内調達がし易く、シリコン系太陽電池よりも安価に製造できる点が挙げられます。また、従来の太陽光電と比べて非常に軽いため、輸送コストを抑えられ、また、架台が必要ないため設置コストも削減できます。このように、長所の多いペロブスカイト太陽電池ではありますが、その普及に向けては、課題もあります。紫外線に弱く寿命も5~10年とシリコン系より短いなど耐久性が低いこと、面積が広くなると性能にばらつきが出るため大面積化が難しいこと、鉛等の原料の安全性です。 開発の初期の頃には、エネルギー変換効率(照射された太陽光エネルギーのうち何%を電力に変換できるか)の向上も課題の1つとされていましたが、現在では研究が進み、1cm角では23%と、従来のシリコン系太陽電池のエネルギー変換効率(14~20%程)に匹敵するエネルギー変換効率が実現しているそうです。

出所 ㈱アイシン WEBサイト

 

国内メーカーのペロブスカイト関連製品開発の例

 

国の期待と支援方針

中国、韓国、英国、ポーランドなどでもペロブスカイト太陽電池の開発が急速に進み、競争が激化する中、日本政府は、国際競争に勝ち抜くために、量産技術をできるだけ早く確立すること、生産体制を早急に整備すること、そして需要を創出することが急務であると捉えています。内閣府の公表資料によると、令和6年度予算案に計上されているペロブスカイト太陽電池の開発プロジェクト予算額を498億円から648億円に引上げるとのことです。

内閣府HP  「分野別投資戦略 参考資料(次世代再エネ)」を基に当社編集

 

編集後記

寿命や耐久性の面で課題は残るものの、曲がる、軽い、低コストという長所を踏まえると、身の回りにあるさまざまなモノや場所に、太陽電池を付けられる可能性があると言えます。私たちの生活にどんな変化が起きるのか実用化が進むのが楽しみです。

最後に本コラムの内容を1枚にまとめたニュースレターを添付しますので、ご参照ください。
ニュースレター_2024.8

令和6年8月30日
株式会社リーテム
サーキュラーエコノミー推進室
杉山 里恵
(図)加藤 翠

 

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