水素は燃焼すると酸素と結びついて水になりCO2を排出しないため、次世代エネルギーとして期待されています。再生可能で低炭素な水素の普及に向けた国際的な動きが加速しています。
水素の色とは?
近年、脱炭素社会をテーマにした会話の中で、グレー水素、ブルー水素、グリーン水素、という表現が使われることがあります。初めて聞く方は、水素は無色無臭のガスなのに?どうして?と思うかもしれません。
石油、天然ガス、石炭等の化石燃料から作られた水素は、“グレー水素”と呼ばれます。生成する時にCO2を排出するためです。反対に、太陽光など再生可能エネルギーから生成した水素のことを、“グリーン水素”と呼びます。グレー水素を化石燃料からつくる時に発生するCO2を地中に貯留する(CCS手法)等の方法により、大気中にCO2を排出せずに処理をした場合、その方法で生成した水素を“ブルー水素”と呼びます。水素の生成から使用までのライフサイクルを通してCO2排出が無い場合のみ、“グリーン水素”であるということですね。
COP28で行われた水素社会に向けた国際会合
気候変動問題を話し合う国際会議であるCOP28(正式名: 国連気候変動枠組条約第28回締約国会議)が、今年11月30日~12月12日にアラブ首長国連邦のドバイで開催されました。世界中から約200の国と地域が参加しました。
COP28の会期中に議長国の主催で行われた国際会合の一つに、“水素ハイレベルラウンドテーブル”という会合がありました。日本を含む39の参加国は、再生可能かつ低炭素な水素および水素派生物の世界市場の発展を目的に、それぞれの国のグリーン水素認証制度の相互承認を目指すことに賛同しました。水素を取引するときにグリーン水素であることを、客観的に証明する仕組みが必要なためです。
小池都知事、水素取引所構想を発表
同じくCOP28において開催された 「COP28地域気候行動サミット」(12月1~2日開催)では、日本から参加した小池百合子東京都知事が、国内に「水素取引所」を立ち上げる構想を発表しました。水素の売手と買手を仲介する取引所を開設し、取引きの透明性を高めることによって水素の需要を伸ばそうというものです。小池知事は「都が率先して水素を利用し、民間にも働きかける」と述べています。来年には世界初の水素取引所がドイツで開設される見通しで、都はこれを主導するドイツの財団“H2グローバル”と連携してノウハウを得ながら開設を目指すそうです。
この他に東京都は、都内に燃料電池バスやトラック等の大型商用車両の水素化に不可欠であるとして、水素ステーションの整備拡大を進めています。水素ステーションとは、燃料電池自動車に水素を供給する場所のことで、燃料電池自動車にとってのガソリンスタンドのようなものです。
自動車を動かすガソリン燃料を電気に切替えることでもCO2を削減できますが、バスや大型トラックを電気自動車にすると、充電池が非常に大きくなってしまい、充電に長い時間がかかるので実用的でないとされています。しかし、水素エンジンなら重い車体を動かすパワーがあり、水素の補給にかかる時間もガソリンと同じほど短時間で済むのがその理由です。
水素ステーションの整備
日本では、民間組織による国の補助金制度を利用した水素ステーションの整備も進んでいます。「首都圏」「中京圏」「関西圏」「北部九州圏」の四大都市圏と、四大都市圏を結ぶ幹線沿いを中心に、全国の161ヶ所に設置されています(2023年11月13日現在)
一般社団法人次世代自動車振興センター
https://www.cev-pc.or.jp/suiso_station/index.html
日本の水素基本戦略
日本は、2050年カーボンニュートラルの目標達成のために水素の活用が不可欠だとして、2017年に水素社会の実現のための国の方針である「水素基本戦略」を発表しました。当時これは世界初の水素に関する国家戦略でした。
政府は今年6月にこの「水素基本戦略」を改定しました。2017年の制定時に示された家庭での利用の促進に加えて、工場や機械、陸・海・空の輸送手段等の産業面でも水素の消費拡大を目指すことが盛り込まれました。また、2040年の水素供給量を現在の約6倍となる年1,200万トン程度に増やすという具体的な目標も示されました。これにより、日本が強みを持つ9つの水素関連技術分野を国が重点的に支援することになります。
環境省 脱炭素ポータル 水素基本戦略を改定~水素社会実現に向けた環境省の取り組み~
https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/topics/20230727-topic-48.html
編集後記
日本が2017年6月に他国に先駆けて水素基本戦略を発表し、その3年後の2020年7月にEUが 「水素戦略」を発表、米国が今年6月に「国家クリーン水素戦略」を発表するなど、世界で国家水素戦略の策定が相次いでいます。グリーン水素は、脱炭素化に向けた有効な再生可能エネルギーの1つであるだけでなく、重要な経済成長分野であることを認識しました。水素は燃料電池としても利用できるので、災害時のエネルギーとしても期待できます。水素エネルギー利用拡大のメリットや課題をもっと知りたくなりました。
最後に本コラムの内容を1枚にまとめたニュースレターを添付しますので、ご参照ください。
ニュースレター_2023.12
令和5年12月25日
株式会社リーテム
サーキュラーエコノミー推進室
杉山 里恵
(図)加藤 翠
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