どうする?災害廃棄物

近年、大規模な自然災害が頻発し、災害廃棄物の処理は全国的な課題になっています。豪雨による甚大な被害をもたらした台風19号の上陸からおよそ1カ月。現在も各地で、市民、ボランティア、自治体、廃棄物処理事業者、自衛隊が大量の災害廃棄物の撤去にあたっています。

災害廃棄物とは?

災害廃棄物とは、地震や風水害等の災害で家屋やビルが倒壊したものや、家具、畳、家電、その他の被災で使用出来なくなった総てを指します。撤去した災害廃棄物は仮置き場に集積され、順次処理されますが、長期間置くと周辺の衛生環境に悪影響があるため、迅速な処理が求められます。

今年10月の台風19号の後、自衛隊は災害廃棄物と道路上の障害物撤去のため、宮城、福島、長野、茨城、千葉等の被災地にトラックや重機の部隊を派遣しています。災害廃棄物の総量は2018年の西日本豪雨の時の190万トンを超える見通しです。茨城県では県内外の自治体職員が仮置き場の管理と処分先の確保に追われています。
千曲川の堤防決壊で約5000棟が浸水した長野市では、市公認の仮置き場では追い付かず自治会が苦肉の策で設けた臨時集積所が30ヵ所以上にのぼっています。

 

災害廃棄物に関する主な法律は何?

災害廃棄物については、主に廃棄物処理法と災害対策基本法の2つの法律により定められています。幾つもの災害経験を踏まえ、2015年7月に災害廃棄物対策強化のために、これらの法律が改正されました。

廃棄物処理法には「災害廃棄物」という区分や定義はなく、事業場から出た災害廃棄物は産業廃棄物、事業活動に由来しない災害廃棄物は一般廃棄物に該当します(※特定の大規模災害での例外的措置はあり)。後者の処理責任は市町村にあります。災害時の廃棄物の量は平常より多いため、被災した自治体のみで迅速な回収・選別・処理を行うのは極めて困難です。そのため仮設保管置場の設置や、民間の廃棄物処理施設(一廃・産廃)への協力要請、仮設焼却炉の設置、市県境を越えた広域的な処理が認められています。

 

増える自然災害

1971年から2018年の自然災害の発生件数と被害額の推移を見ると、発生件数は変動を伴いながら増加傾向にあります。発生件数は台風が57.1%と最も多く、次いで地震、洪水の順です。被害額では地震が8割超を占めています。
一方で、この5年間に台風や豪雨による大規模な風水害が増えています。中でも、2018年7月の西日本豪雨では、豪雨災害としては初めて中小企業被害が激甚災害として指定されるほど、広範囲に被害をもたらしました。
気候変動の影響により、今後も風水害が頻発することが懸念されています。

 

民間事業者による縁の下の力

災害廃棄物対応の現場では、廃棄物処理事業者、建設解体事業者等の民間事業者が大きな役割を果たしています。災害廃棄物の運搬と処分についての市町村への支援のみならず、被災地企業の災害廃棄物の撤去・処分においても多いに頼りにされるためです。しかし、廃棄物処理産業は、廃棄物運搬車両のドライバー不足や、昨今の中国の廃棄物輸入規制の影響による廃棄物のオーバーフローの問題を抱えており、災害廃棄物対応に協力したくても物理的に難しいという悩ましい一面もあります。

 

災害増加に対処する企業のBCP(事業継続計画)

 災害廃棄物に関する事前の備えは企業にとっても重要です。平常時に、管轄の自治体の災害対策計画の内容を把握しておき、発災時に自治体はどのような対応をしてくれるのか、普段取引している民間の廃棄物事業者が対応しきれない際に、協力を仰ぐことのできる事業者はどこか?企業が自ら行うべきことは何か?等を調査、整理しておくことが、迅速な災害廃棄物の撤去と事業活動の早期再開に有効と考えられます。

環境省の運営している災害廃棄物対策のポータルサイト(災害廃棄物対策情報サイトhttp://kouikishori.env.go.jp/)には関連する法律の概要や行動指針から、仮置き場の臭気対策、災害廃棄物の種類毎の扱い等の技術資料、過去の災害時の廃棄物処理のフロー等々、多くの有益情報が掲載されています。企業の皆さまにも参考になりそうです。

 

最後に本コラムの内容を1枚にまとめたニュースレターを添付しますので、ご参照ください。
ニュースレター_2019.11

 

令和元年11月18日
株式会社リーテム
サスティナビリティ・ソリューション部
杉山 里恵
(図)加藤 翠

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