チャイナショックその後の影響【続編】

中国が廃棄物輸入規制をするようになって2年が経過した現在、国内への影響は依然として続いていて、トンネルの出口はまだ見えないようです。今月は古紙市場と廃プラスチック処理への影響をお伝えします。

使用済み段ボールを買取ってもらえない?!

■古紙市況の低迷

2018年末から中国政府は、ミックス古紙(未選別の古紙)の輸入禁止、古紙受入れの異物混入率をこれまでの1.5%から0.5%に引き下げ、古紙輸入ライセンスの厳格管理等、輸入規制しています。日本国内の需要と対中輸出量の両方が落ちたことで、国内メーカー・古紙問屋ともに在庫量が急増し、古紙市場の主要3品である、段ボール、新聞、雑誌のうち、段ボールが最も安値となっています。

■段ボールの無償回収

中国向けの古紙価格は長期間、高止まりしていたため、段ボールの排出者に古紙回収業者が資源としての対価を支払う「買取り方式」が定着していましたが、市況低迷の長期化で回収業者は不採算を解消するため、無償での引き取りや、排出者が回収業者に料金を支払う「委託処理」に切替わりつつあります。主に「無償回収」や「委託処理」の対象になっているのはスーパーやコンビニ等の小規模店舗から出る少量小口のもの。回収運賃と古紙問屋での選別・梱包加工コストにより、採算割れしてしまうためです。

 

廃プラスチック類処理施設等に関する環境省の第3回アンケート結果

■アンケート調査の背景と概要

2017年末から中国が実施している使用済プラスチック等の輸入規制措置等の影響(本コラム今年4月号5月号を参照)に関する実態把握のため、環境省が今年8月~9月に都道府県等及び産業廃棄物処理事業者に対して行ったアンケート調査の結果が公表されました。環境省によるアンケート調査は2018年8月、2019年3月に続いて3度目となります。

■アンケート調査結果の概要

自治体の回答によると、中国等の廃棄物輸入規制による不法投棄は起きていないとのことです。一方、「廃棄物の保管上限超過および保管量増加傾向を認めた」との回答は約20%で、前回調査時の32%から減っています。

処理業者の回答によると、処理円滑化の課題として「処理後物の最終処理先・プラスチック再生材の販売先確保が困難なこと」が最も多く挙がっています。処理料金値上げの要因で最も多いのは「処理後物の最終処分料金の増加」次は「焼却処分費用の増加」でした。また、受入制限を現在行っているのは52件(約27%)でした。

■国の今後の方針

調査結果を受けて環境省は、今後の方針として「自治体への事前協議制の廃止、緩和、手続き合理化の依頼」や「優良認定業者の保管量上限の引き上げ」「排出者への適正な対価支払いの周知」「市町村への廃プラ受入の積極的検討の依頼」 「今年5月策定のプラスチック資源循環戦略に基づく資源循環の促進」等を挙げています。

製造分野における再生材利用率に公の目標を設定することが、プラ再生ビジネスに経済的インセンティブをもたらし、プラスチックの資源循環が進む方法の一つではないかと考えます。

 

最後に本コラムの内容を1枚にまとめたニュースレターを添付しますので、ご参照ください。
ニュースレター_2019.12

 

令和元年12月19日
株式会社リーテム
サスティナビリティ・ソリューション部
杉山 里恵
(図)加藤 翠

リーテムのサービスのご紹介

PCB廃棄物処理コンサルティング

PCB廃棄物処理コンサルティング