エネルギーの見える化

電力やガスなどの使用によって排出される温室効果ガスの大幅な削減を目指すにあたって、「エネルギーの見える化」により省エネの効果があるとして注目されているのが「EMS (=エネルギー・マネジメントシステム)」です。2050年のカーボンニュートラル達成を目指す地域や企業、施設等が採用している、エネルギー・マネジメントシステムって何?という方に、基礎ワードをご紹介します。

 

エネルギーの見える化 「EMS(エネルギー・マネジメントシステム)」

エネルギー・マネジメントシステム(=EMS)は、電力やガスなどのエネルギー使用量を把握し、エネルギーのムダを省く仕組みです。具体的には、センサーや通信ネットワークを使って、エネルギーが、いつ、どの機器で、どのくらい使用されているのかをリアルタイムで遠隔監視し、パソコンやタブレットの画面上にデータやグラフを写し出します。 またシステムが取得したデータを蓄積し、分析をすることが可能です。これにより、例えば時間単位、日単位、月単位のエネルギー使用量の推移も把握できるため、どの時間帯の、どの機器による使用量が多いかなど、取り組むべき課題が明確になり、エネルギー削減の計画・実行・評価をし易くなります。

 

 

管理対象によって異なる「EMS」

管理する対象の施設によって、さまざまな種類のEMSがあります。例えばビルのエネルギー管理をするBEMS(Building and Energy Management System)、地域全体のエネルギー管理のCEMS(Community Energy Management System)工場向けのFEMS(Factory EMS)、住宅向けのHEMS(Home EMS)、などです。エネルギーマネジメントシステムを意味するEMSという語の先頭に、それぞれ、ビルを表すB、地域を表すC、工場のF、住宅のH、が付いていて、どれもエネルギーの需要と供給の監視、分析、制御を目的としたシステムの基本は共通です。

 

工場向けのエネルギー管理 FEMS(Factory Energy Management System)

ほぼ毎日ラインを稼働させている工場では、多くのエネルギーを消費します。工場や施設では通常、稼働プロセスの最大需要に合わせて余裕を持たせたエネルギーを供給しているため、構造的にエネルギーの無駄が生じます。そのため、エネルギーコストと温室効果ガス排出量の削減は多くの工場にとって悩みの種でしょう。工場向けのFEMS(Factory Energy Management System)によって、受配電設備のエネルギー管理、生産設備のエネルギー使用や稼働状況の把握、各種機器の制御の自動化が可能です。エネルギー使用量を監視しながら生産ラインや照明機器、空調などの運転を制御して、ピーク電力の調整が出来るなど、さまざまな機能をそなえたFEMSが実用化されているようです。

イメージ: 日立製作所WEB  FEMSソリューション「Lumada」 より

 

地域全体のエネルギー管理 CEMSの例

本コラムの7月号で、新潟県佐渡市の脱炭素の取組みをご紹介しました。(環境省が募集した「第1回 脱炭素先行地域」 https://www.re-tem.com/ecotimes/column/jul2022/) 佐渡市は、2050年までにCO2排出量実質ゼロにするゼロカーボン・アイランドを最終目標にしています。

公開された計画書によると、市は「広大な離島にエネルギー需要拠点が分散している」、「エネルギー供給を、ほぼ島外からの化石燃料の海上輸送に頼っており、環境負荷リスクや災害時にエネルギー供給が停止するリスク」等の課題があります。この解決に向けて、太陽光や木質バイオマスによる再エネ導入と、メガ蓄電池の分散設置と共に、CEMS(Community Energy Management System)の導入を予定しています。島全体の電力の需給バランスが崩れて停電を起こさないよう、CEMSの電力需給調整機能を使って、発電量と消費量をバランスさせるためです。

 

新潟県佐渡市

離島地域におけるEMSを活用した自立分散・再生可能エネルギーシステム導入による持続可能な地域循環共生圏の構築(共同提案 新潟県)

環境省ホームページ 第1回選定地方公共団体 計画提案書より

 

編集後記

国内にも風力発電や太陽光発電その他の再生可能エネルギーの導入が拡がってきた印象がありますが、資源エネルギー庁によると2019年度の日本の再エネ電力比率は18%で、残りの約8割はまだ化石エネルギーです。国のエネルギー政策の一部は、2030年に向けた国全体での「徹底した省エネ」と「再エネ拡大」です。エネルギーを見える化して、管理しながら効率的に使うことで、エネルギーの“もったいない”を防げますね。再エネとエネルギーマネジメントシステムのセットでの導入は必須と言えます。

 

最後に本コラムの内容を1枚にまとめたニュースレターを添付しますので、ご参照ください。
ニュースレター_2022.08

 

 

令和4年8月19日
株式会社リーテム
サーキュラーエコノミー推進室
杉山 里恵
(図)加藤 翠

 

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