脱炭素先行地域

再生エネルギーの地産地消と地方創生を同時に叶えるため、地域の果敢な挑戦が始まっています。第1回脱炭素先行地域に選ばれた地域はどんな未来を描いているのでしょう。

 

脱炭素先行地域とは

「脱炭素先行地域」 とは、日本の2050年カーボンニュートラルの2030年度目標に向けて、地域脱炭素の実現と地方創生を目指すモデル地域のことです。国は、「意欲と実現性の高い地域をドミノの起点として全国に取組を広げるために施策を総動員する」 としています。

今年1月に実施された「第1回 脱炭素先行地域公募」に、共同提案を含む102の自治体から79件の応募があり、選考のうえ、先進性、モデル性、実現可能性において優れた26の計画提案が第1回脱炭素先行地域に選ばれました。

 

地域の脱炭素によって目指す効果

地域の企業や自治体などが中心となって、再生可能エネルギーを導入し、エネルギーの地産地消を実現することで、地域に新たな産業と雇用を生み、防災や生活の質の向上などさまざまなプラス効果を生むことが 「地域脱炭素」 の狙いです。

 

脱炭素先行地域づくりガイドブック第2版(環境省)の内容をもとに筆者作成

 

第1回に選ばれた地域の脱炭素計画とは

第1回に選ばれた地域の計画の主体は、市区町村や都道府県などの地方公共団体に加えて、公民学(自治体、企業、大学)の連携や、市町村と企業とNPOの連携などさまざまです。いずれの計画においても、民生部門(家庭部門、業務その他部門)の電力消費に伴うCO2排出を2030年までに実質ゼロにする目標と、日本の2030年度目標と整合する運輸部門などの温室効果ガス排出削減目標とが設定され、それらの達成に向けた具体的なプランとタイムスケジュールが提示されています。全内容を紹介したい衝動に駆られる素晴らしい計画ばかりなのですが、ここでは2つの地域の計画の一部をご紹介します。26地域の計画が環境省のWebサイトに紹介されていますので、ご関心のある方はご覧になってみてください。

第1回選定地方公共団体 計画提案書(環境省)https://www.env.go.jp/policy/roadmapcontents/

 

【埼玉県さいたま市】
さいたま発の公民学によるグリーン共創モデル

共同提案者:埼玉大学、芝浦工業大学、東京電力パワーグリッド㈱埼玉総支社

全公共施設、2大学、浦和美園地区の商業施設・モデル街区等大口電力需要家が、太陽光発電設備等を設置し、事業者と連携したEMS(エネルギーマネジメントシステム)による需給管理のもと系統最大効率化を図りつつ、新設のごみ発電、市内外のフロート太陽光など多様な再エネ電源を活用し脱炭素化を図る。また、公共施設等の脱炭素化と連携し、市域全体で展開する再エネ活用のシェア型マルチモビリティーサービス(小型EV、EVスクーター、バッテリーステーション等)の大規模拡大を図る。


環境省ホームページ 第1回選定地方公共団体 計画提案書より

 

【新潟県佐渡市】
離島地域におけるEMSを活用した自立分散・再生可能エネルギーシステム導入による
持続可能な地域循環共生圏の構築
共同提案者:新潟県

離島特有のエネルギーの災害脆弱性等を踏まえ、佐渡市全域における官民の防災・観光・教育125施設の屋上等に太陽光や蓄電池、耕作放棄地等を活用したオフサイトの太陽光、木質バイオマス発電、10地区の主要防災拠点に大型蓄電池を導入。合わせてEMSによる一元管理で脱炭素化を図る。公用車・レンタカーEV化、グリーンスローモビリティによる地域交通シェアリングサービス、再エネ100%EVステーションの導入等を行う。


環境省ホームページ 第1回選定地方公共団体 計画提案書より

 

第2回目の先行地域の応募はつい先日の7月26日に開始されており、募集期間は8月26日迄の1ヶ月間です。国は今後、年2回程度の募集を行い、2025年度までに少なくとも100ヶ所を選定することを目指しています。

※脱炭素先行地域募集ページ(環境省)
https://policies.env.go.jp/policy/roadmap/preceding-region/boshu-02.html#requirements

 

編集後記

地球環境の保全のために個人に貢献出来ることはほんのわずかですが、それでも親として、我が子やその孫、さらにひ孫がこの先の人生を送る地球、国、地域、町を、出来るかぎり住みやすい環境にして残してあげたいと、シンプルにそう思います。先行している地域の脱炭素の取組みがどんどんメディアで紹介され、ドミノ効果が起きることを心から期待しています。第1回脱炭素先行地域に選ばれた各地域がこれからどんな風に変わっていくのか、またどんな地域のどんな取組みが第2回、第3回に選ばれるのか、大変興味深いです。

 

最後に本コラムの内容を1枚にまとめたニュースレターを添付しますので、ご参照ください。
ニュースレター_2022.07

 

令和4年7月28日
株式会社リーテム
サスティナビリティ・ソリューション部
杉山 里恵
(図)加藤 翠

 

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