ケーススタディから学ぶ廃棄物の取り扱い(4) ~企業の事業活動における「少量廃棄物」の取扱い(廃棄物処理法、各種環境法令)~ 

今回のスタディは、企業の事業活動から廃棄物が発生したものの、その廃棄物の量はとても少なく、収集運搬業者を手配するまでもない「少量廃棄物」をテーマとして、その取扱いについてご紹介します。

まず、今回のスタディをご理解いただくために、Q&A形式で2つほど出題させていただきます。

少量廃棄物Q&A

<question>

例えば、企業の事業活動に伴って使用した洗浄液(家庭でも使用される洗浄液のようなもの)5リットル程度を廃棄したいとします。
しかし前述のとおり、家庭でも使用されているものと同等なため、会社の給湯室の流し台に流して処分したいのですが、これってよろしいのでしょうか?

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 <question>

例えば、数人の事務所から「ビニールくず(廃プラ)」レジ袋1袋を廃棄したいとします。
しかし前述のとおり、レジ袋1袋程度しかないため、収集運搬業者を手配するのは、割に合うとは言えないので、家庭から出されて集積される町のゴミステーションに出したいのですが、これってよろしいのでしょうか?

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<answer>

答えは、どちらも(基本的には)okです。

 

次に、今回のスタディをご説明するにあたり、先に、廃棄物処理法で定められている「廃棄物の定義」をご紹介します。

廃棄物の定義

<「廃棄物の定義」(廃棄物処理法、抜粋)>

「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、・・、廃酸、廃アルカリ、・・その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のものをいう。

<「産業廃棄物の定義」(廃棄物処理法、抜粋)>

「産業廃棄物」とは、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、・・、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物
廃棄物処理および清掃に関する法律

この「廃棄物の定義」、「産業廃棄物の定義」にもあるとおり、原則的には、先ほどの2つの事例は産業廃棄物に該当します。
従い、産業廃棄物に該当すると、自ら処理するか、産廃処理業者に処理を委託しなければなりません。

 

しかし、この2つの事例は、次の理由から、産廃処理業者への処理委託でなくてもよいこととなります。

産業廃棄物だが、処理委託しなくてもよい理由

(1) 水濁法、下水道法などの基準値以下の排水であるから
(2) 廃棄物処理法で定められている「あわせ産廃」に該当するから

まず、(1) の水濁法、下水道法の基準値以下であれば、流し台に流してもよいことの理由をご説明します。

<理由>(1) 基準値以下の排水について

『特別法は一般法に優先する』

この言葉をご存じでしょうか?
参考までに、ウィキペディアでは、以下のように紹介されています。

「一般法と特別法とで法が異なった規律を定めている場合、特別法の適用を受ける事象は一般法の規律が排除され、特別法の規律が適用される。」

一般法・特別法

今回の事例で言えば、水濁法や下水道法が特別法に位置し、廃棄物処理法が一般法に位置するとされています。
従い、特別法である水濁法などの基準値以下であれば、ある程度は流し台に流してもよいこととなります。

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次に、(2) のあわせ産廃についてご説明します。

<理由>(2) あわせ産廃について

このあわせ産廃とは、一般廃棄物の処理する責任のある市町村(自治体)が、一般廃棄物と同等の量や性状、種類であれば、産廃であっても処理することができる、というものです。これは廃棄物処理法にも定められています。

これに該当すれば、(基本的には)産業廃棄物も一般廃棄物と同じ扱いで排出することができます。ただし、これについてはその地域の自治体によって考えがマチマチなため注意が必要です。
しかしながら、基本的には、ゴミ袋1袋程度であれば、それと、家庭ゴミと同様なゴミであれば、町のゴミステーションで回収してくれるものと思われます。

とは言っても、たまにあるのが、一廃系の社員の弁当ガラでも、廃プラ10kg以上になると産業廃棄物として処理すること、とのルールしている自治体も中
にはありますので、その意味でも注意が必要になります。

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今回のコラムは、「少量の廃棄物」をテーマに、廃棄物処理法を中心に、その他環境法令の特別法、一般法の考え方についてもご紹介させていただきました。

今回のご紹介は、あくまでも法律上の話であり、ごく少量の廃棄物における話であるということ、また、これらの判断基準は各自治体により様々なため、すべての地域で通用するというわけではないとのこと、これらの点をご理解願います。

さらに、この水濁法の基準値以下だと思って、下水道や公共用水域に安易に流してしまうと、1年ほど前にありました利根川水域でのホルムアルデヒドの事件のようなことになってしまいますので、本コラムの読者におかれてはそのようなことにはならないようお願いできればと思います。

 

 

平成25年9月27日
株式会社リーテム
マネジメント推進部
坂本裕尚
(図)池田翠