全国で盛土規制始まる

静岡県熱海市で2021年7月に発生した土石流災害で、盛土の存在が被害を拡大した要因であるとして、危険な盛土を全国的に規制する法律が整備されました。今年5月に施行されます。

 

熱海市の盛土被害

国土交通省 盛土規制法 概要資料より
国土交通省 盛土規制法 概要資料より

2021年7月の熱海市の土石流災害は、熱海市伊豆山の逢初(あいぞめ)川流域で、大雨によって約5万立方メートルの盛土が崩落し、大規模な土石流を起こしたものです。周辺に住む方々は避難生活を余儀なくされました。土砂が道路に流れ込んでくる様子や捜索活動の様子を伝える映像は多くの方の記憶に残っているのではないでしょうか。死者・行方不明者28名、住宅被害98棟、という甚大な被害がありました。

 

盛土の中に建設系の産業廃棄物

地盤災害が専門の釜井俊孝教授(京都大学防災研究所)によると、盛土は大きく2つに分けられます。1つは、宅地造成の際に低い場所を埋めて土地を作る 「宅地盛土」と言われるもので、土砂災害を防ぐため排水設備の設置が義務付けられています。もう1つは、建設現場から出る「建設残土(建設発生土)」を山の中に“盛土”として投棄しているケースです。

静岡県は、熱海市の現場調査の結果、崩落した盛土部分の実態は残土処理場だったとの見解を示しました。盛土部分に排水設備は確認できなかったとのことです。また、2021年に崩落が起きる前年の2020年8月に、盛土の中に産業廃棄物とみられる木くずが混入していることが判り、造成工事を行った不動産管理会社に対し熱海市と静岡県が、撤去指導をしていたという事実が公表されています。

 

盛土による土砂崩れが他にも

熱海市の災害の1ヶ月前の2021年6月には、千葉県多古町で盛土作業中に土砂崩れが発生しています。重機で作業していた男性が全身打撲の怪我を負いドクターヘリで病院に搬送されました。崩れた土砂は付近に幅約60m、高さ最大1m80cm堆積して現場脇の県道をふさぎ、約1kmにわたって通行止めになりました。この盛土は、建設業者が大量に運び入れた残土で、多古町の注意・指導にも関わらず搬入が止まず、6月に崩落したという事例です。

 

盛土規制法の誕生

熱海市の土石流災害をきっかけに、国は都道府県に盛土の総点検を要請。全国で約36,000ヶ所が目視等により点検され、盛土等の規制が必ずしも十分でないエリアが多数存在することが認識されました。

その点検結果等も踏まえ、今年5月26日に、盛土規制法=「正式名 宅地造成及び特定盛土等規制法」 が施行されます(2022年5月27日に公布)。盛土等による災害から国民の生命と身体を守るため、土地の用途にかかわらず、危険な盛土を全国一 律の基準で包括的に規制する法律として、現行の「宅地造成等規制法」の法律名と内容を抜本的に改正して作られました。

国土交通省  https://www.mlit.go.jp/toshi/toshi_tobou_tk_000076.html

 

編集後記

建設残土は「再利用できる資源」であるとして廃棄物処理法上の「廃棄物」には含まれていません。そのため、これまでは「盛土」の名目で危険性を無視して同じ場所に繰り返し投棄される行為が、厳しい規制を受けずに見逃されたケースは多かったようです。盛土規制法の施行によって、人の命や生活を奪う災害を引き起こす「危険な盛土」が減ることが期待されます。

 

最後に本コラムの内容を1枚にまとめたニュースレターを添付しますので、ご参照ください。
ニュースレター_2023.1

 

令和5年1月26日
株式会社リーテム
サーキュラーエコノミー推進室
杉山 里恵
(図)加藤 翠

 

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