読み解く!環境法令(1)  ~水質汚濁防止法~

6月1日から水質汚濁防止法が改正、施行されます。(平成23年6月公布)
改正内容については、各自治体主催の説明会も数多く行われており、改正の対象者も限定されておりますので、本コラムでは、とてもややこしい水質汚濁防止法(以下、水濁法)について、本コラムをお読みになられている方の会社等の施設が水濁法の対象施設となっていないかの見直しの確認も合わせて、改正内容を簡単にご紹介できればと思います。

 

【 概要 】
工場や事業所から公共用水域に排出される水の排出、および地下に浸透する汚水の浸透を規制することと、生活排水対策の実施を推進することなどによって、公共用水域や地下水の水質の汚濁の防止を図り、それによって国民の健康を保護するとともに生活環境を保全することを目的としています。

【 対象施設 】
以下の特定施設、及び排水が規制対象となります。
① 水濁法で定める特定施設から公共用水域(注1)へ排出している施設からの排水
② 有害物質使用特定施設から地下に浸透する汚水等を含む水
③ 事故時などに貯油施設等から排出される油を含んだ排水

(注1)公共用水域とは、河川、湖沼、沿岸海域、公共溝渠、かんがい用水路、その他公共用に供される水路を指します。
ただし、公共用下水道(終末処理場を設置する下水道)は下水道法の適用を受けるため、対象外となります。

④ 水質汚濁防止法で定める総量規制地域(注2)に位置していて、排水量が50m3以上/日、かつ規制物質を排出している施設も規制の対象となります。

(注2)総量規制地域とは、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海に排出水を流入する指定地域ごとの地域を指します。
    東京湾(東京、千葉、神奈川、埼玉)
    伊勢湾(愛知、三重、岐阜)
    瀬戸内海(大阪、京都、奈良、兵庫、和歌山、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡、大分)
          ● 総量規制物質は、COD、窒素、燐であって、規制値は都道府県知事が条例で定めます。
          ●1日あたりの平均的な排水の量(日平均排水量)が50m3以上の事業所が対象です。

 

 【 本改正概要 】

本改正では、すでに水濁法で地下水への有害物質の地下浸透が禁止されているものの、工場または事業場からの有害物質の漏えいによる地下水汚染事例が確認されていること、さらに、その有害物質の地下浸透の原因は、施設の老朽化や作業ミス等が大半であることを受け、対象施設の拡大や、構造等に関する規制を設けたものとなります。

≪ 対象施設の拡大 ≫
・有害物質貯蔵指定施設の設置者
・有害物質使用特定施設で、公共用水域に水を排出していないため届出を行っていなかった事業者

 ≪ 構造等に関する基準遵守義務等 ≫
・有害物質使用特定施設又は有害物質貯蔵指定施設の設置者に対する、施設の床面及び周囲、施設に付帯する配管等、施設に付帯する排水溝等、地下貯蔵施設に関する構造等に関する基準の遵守義務 

≪ 定期点検の義務の創設 ≫
・施設の設置者に対する、施設の構造等についての、目視等の方法により定期点検を実施、その結果の記録、保存義務

 

 ≪ 参考HP ≫

◆環境省、水質汚濁防止法の改正について
http://www.env.go.jp/water/chikasui/brief2012.html

◆環境省、水質汚濁防止法の一部を改正する法律の概要
http://www.env.go.jp/water/chikasui/brief2012/law_gaiyo.pdf

 

 先日、5月18日から20日にかけて、関東各地の利根川水系の浄水場で基準値を超える有害物質ホルムアルデヒドが検出されました。本コラムの筆者の自宅のある柏市でも19日正午から20日明け方にかけて断水が続き、通水後も長時間汚れた水が流れ続きました。本事件の原因を特定すべく、群馬県と埼玉県が有害物質を扱っている事業所へ聞き取り調査を行っているというニュースもありますので、今後はこのようなことがないように、この水濁法を有害物質等を扱う事業者は遵守し、行政も必要に応じて立ち入り調査等を行っていただければと願うばかりです。

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株式会社リーテム
経営管理部
法務G
坂本裕尚