読み解く!廃棄物処理法(3)~廃棄物の性状通知~

前回のコラムでも触れさせていただきました、関東各地の利根川水系の浄水場で基準値を超える有害物質ホルムアルデヒド問題の事件は、報道記事等によりますと、埼玉県は排出事業者が処理業者に処理委託した廃液中に、原因物質ヘキサメチレンテトラミン(HMT)が入っており、その廃液が十分に処理されずに利根川水系に排出されたと推定しているとのことです。さらに、排出事業者がその原因物質についての情報を処理業者に伝えていなかった、いわゆる通知義務違反ではないかとの報道がされています。

今回のコラムでは、この通知義務等について、さらに今回の事件を教訓としての排出事業者の廃棄物管理見直しチェックポイントについてご紹介させていただきます。

【排出事業者から処理業者への廃棄物の性状に関する通知】
排出事業者と処理業者間の廃棄物の性状に関する書面等のやり取りについては、次の2種類があります。
① 契約書(処理業者の許可証添付)
② マニフェスト

この他にも環境省が推奨している「廃棄物データシート(WDS)」がありますが、これは、「廃棄物情報の提供に関するガイドライン」で、環境省が排出事業者に対して推奨しているものであり、このWDSを使用するか否かは排出事業者の任意の判断にゆだねられております。
<廃棄物情報の提供に関するガイドライン>
http://www.env.go.jp/recycle/misc/wds/index.html
(環境省)

【通知義務】
今回の事件の報道にもある通知義務というのは、①の契約書により、廃棄物の性状を伝えなければならないという義務のことを指すものと考えられます。マニフェストでは「有害物質等」という欄がありますが、法律ではそれまで記載することは求められておりません。WDSについても任意ですので使用する義務はありません。

よって、今回の事件について、もし排出事業者の責任を問うとすると、(少々むりくりの気はありますが)、契約書への「廃棄物の性状」に関する未記載となる可能性はゼロではないものと推測されます。
これは、報道記事等によると、『県は「契約書ではHMTについて説明されていなかった。業者とのやり取りも運搬業者任せという印象を受けた」としている』とのことでありますが、まだ事実確認がとれていないため、あくまでも仮定の中での推測であることをご了承願います。
罰則等は自治体や警察の判断、もしくは最終的には裁判所での判決によります。

【契約書への記載事項】
契約書への記載事項としては、以下のサイトのあるとおり、廃棄物処理法で定められております。平成18年の廃棄物処理法改正で記載事項が追加になっておりますので、それ以前に締結した契約書については、確認された方がよろしいかもしれません。
<契約書の記載事項>
http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/resource/attachement/shiryou4.pdf
(東京都環境局)

【廃棄物の性状についての契約書への記載】
この処理委託契約書に記載する「廃棄物の性状」に関して、どの程度までの性状かという具体的なところまでは、廃棄物処理法では定められておりません。では、どのようにその範囲について解釈すべきかを考えてみますと、廃棄物処理法で定めるところの主旨等に照らし合わせて想像すると、おのずと見えてくるものと思われます。
具体的にその範囲を解釈するために、以下のQAで考えてみたいと思います。

≪ question ≫
契約書に「廃棄物の種類」を記載するのに、どうして「性状」までも記載するのか。

≪ answer ≫筆者の解釈)
処理業者が適正な処理を行うために、必要な情報であるから。

従い、処理業者が処理を行うのに際して、必要な情報を伝える義務が排出事業者に求められているものと考えられますので、処理を行うにあたって必要であると思われる「性状」の範囲までを契約書に記載すべきであると私は考えます。(実務的にはすべて契約書に記載することは難しいため、基本的なことを書いて、あとは別紙のとおりとすることも可能です。)
よって、今回の事件では排出事業者は今回混入されてしまった原因物質(HMT)について契約書や、それに代わるものに記載すべきであったものと考えられます。

【罰則】
また、この契約書の不備の点は以上のように想像し考えられますが、今回のケースは、もしこの処理業者での処理ができ得ない、処理する設備等がない処理業者であれば、排出事業者の責任はこれ以上に重くなり、排出事業者の委託基準違反になることも考えられます。(委託基準には、委託する廃棄物を処理することができる施設等を備えた処理業者に委託するなど、処理委託する前に確認することなどが求められています。)

参考までに、以上のことがもし該当した場合の罰則は、法律では以下のとおり定められています。
・契約書などへの未記載…この未記載だけに対しての罰則は特にありません。
(契約書に関しては、以下の法第26条の委託基準違反に含まれ、3年以下の懲役、もしくは300万円以下の罰金
となる可能性があります。)
・処理基準違反であれば、5年以下の懲役、もしくは1,000万円以下の罰金
(以下の法第25条に該当する可能性があります。)
http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/resource/attachement/shiryou6.pdf
(東京都環境局)

(繰り返しますが、これは、報道記事等による情報で考えられうるところであり、まだ確定された情報ではありませんので、あくまでも仮定の中での推測であることをご了承願います。)

【排出事業者の廃棄物管理見直しチェックポイント】
今回のような事件に、本コラムをお読みの会社様が不意をつかれないためにも、以下の点について再度見直し確認をされてはいかがでしょうか。

確認事項

確認例

① 廃棄物の種類、性状に変化がないかの確認

・処理委託開始当初から廃棄物に変化はないか

② 契約書の記載事項の再確認

・現在の法律に準拠した契約内容になっているか

③ 廃棄物の排出行程等に変化がないかの確認

・排出行程が変化したことにより、処理業者が処理できる荷姿等になっているのか

④ 処理業者の処理方法に変化がないかの確認

・処理業者の処理方法が変化した場合、委託している廃棄物を処理できる施設等なのか

 

◆埼玉県、県政ニュース
http://www.pref.saitama.lg.jp/news/page/news120528-13.html

 

以上、今回の事件を教訓として、排出事業者の方では、廃棄物に変化はないのか、排出行程に変化はないのか、契約書の記載内容は正しいのかなど再確認することが望まれます。

また、処理業者の選定にあたっては、
処理コストのみで処理業者を選択するのではなく、
適正に処理できる処理業者なのか、
・コンプライアンス体制の整った処理業者なのか、
通常の廃棄物と異なった廃棄物が搬入された場合には連絡されるような体制が整った処理業者なのか、など、
排出事業者のリスクを最小化してくれる体制のある処理業者を選定することも必要になるものと思われます。

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株式会社リーテム
経営管理部
法務G
坂本裕尚