読み解く!廃棄物処理法(4) ~不適正処理業者~

5月30日はゴミの日、6月5日は環境の日、また6月は環境月間とされていることから、毎年6月には各自治体で不法投棄パトロールなど行っているものと思われます。(補足ですが、自治体の不法投棄パトロールは、6月に限ったことだけではなく、毎週のように行っている自治体も数多くあります。)

今回のコラムでは、その不法投棄の現状や、それに類する不適正処理業者などの情報も合わせて、ご紹介させていただければと思います。

【不法投棄の現状】
環境省が直近で発表した資料によりますと、不法投棄件数及び投棄量の推移は以下のとおりとなります。

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◆産業廃棄物の不法投棄等の状況(平成22年度)について
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=14644
(環境省、平成23年12月28日発表)

この推移表をご覧になられた排出事業者の方は、不法投棄を行う人もしくは悪質な業者等は確実に減っており、廃棄物を取り扱う上でのリスクは減りつつあるのかなと素直に思われるかもしれません。それはそれで間違えではないものと思われますが、よくよく見ると、直近の平成22年度には6.2万tもの投棄量があります。具体的にその量を理解するために、4t車のトラックの台数におきかえてみますと、なんと年間15,500台もの台数になります。それを1日の台数に換算しますと、なんとおおよそ50台ものトラックが毎日のように不法投棄しているという計算になります。
(1年365日ですが、休日もありますのでわかりやすいように310日で計算してみました。)

【廃棄物不適正処理事犯検挙状況】
一方、廃棄物事犯の検挙状況について、警察庁発表の資料を見てみますと、以下のとおりとなります。
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◆警察庁、平成23年中における生活経済事犯の検挙状況等について

クリックしてh23_seikeijihan.pdfにアクセス

ご覧のとおり、ここ5年間は廃棄物事犯の検挙件数等はほぼ横ばいとなっております。しかし、この表には表れていませんが、平成19年までは右肩上がりで上がり続けておりました。平成15年あたりはここ最近の約半分くらいの事犯件数でしたので、やはり廃棄物を扱う上で不適正に扱う人、悪質な業者はまだまだたくさん増えてきており、なかなか減らないものとここから見るとよくわかるものと思われます。

事犯事例についても、この統計資料内に載っておりましたので、ここで紹介させていただきます。
(以下は、平成22年度資料の一部です。)

主要事犯事例

詳細

1

産業廃棄物中間処理許可業者らによる製紙スラッジの不法投棄等に係る廃棄物処理法違反事件 産業廃棄物中間処理許可業者らは、平成20年12月ごろから21年5月ごろまでの間、製紙会社から委託を受けた産業廃棄物である製紙スラッジ約1,980トンを、処分業の許可を受けないで、牧場に埋め立てるなどして処分した。また、同業者らは、製紙スラッジ約68トンを他の場所にも不法投棄していた。22年2月までに、3法人、13人を廃棄物処理法違反(無許可処分業、不法投棄、委託違反)で検挙した。
2 産業廃棄物中間処理許可業者らによる産業廃棄物の委託違反等に係る廃棄物処理法違反及び不動産剥奪事件

廃棄物中間処理許可業者は、平成19年12月ころから20年12月ころまでの間、無許可処理業者に産業廃棄物である木くず等約9,000立方メートルの収集運搬及び処分を代金合計約3,900万円で委託した。同許可業者は、他の無許可処理業者にも産業廃棄物の処理を委託していた。無許可業者のうち、1業者は、受託した産業廃棄物約800立方メートルを他人の土地に積み上げて、不動産を剥奪した。22年12月までに、6法人、49人を廃棄物処理法違反(委託違反、無許可処分業、受託違反、名義貸し違反等)及び不動産侵奪罪で検挙した。

この事犯事例からよくわかりますが、処理業の許可を受けている中間処理業者であっても不法投棄や、それに類する不適正処理を行っていることがわかります。また、検挙状況を見てみますと、その不法行為を行った処理業者だけでなく、その業者に委託した排出事業者も委託違反ということで検挙されております。さらに、検挙されるのは、その法人だけではなく、それに関わった従業員についても多くの人が検挙されております。
これは、廃棄物処理法ではいわゆる両罰規程と呼ばれているものに当たるため、法人は当然ながら、その関係者である社員などの個人に対しても罰則は適用されてしまうのです。

【処理業者でも不法投棄】
また、前述の事犯からも許可業者が不法投棄していることが伺えましたが、いったい許可業者がどれだけ不法投棄をしているかのデータを冒頭の環境省発表の資料で見てみますと以下のとおりとなります。

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◆産業廃棄物の不法投棄等の状況(平成22年度)について
http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=18936&hou_id=14644

 

【不適正処理業者がまだ多くいる理由】
以上のように許可を受けている処理業者であっても、不法投棄や不適正処理を行っているところはまだまだ多くいるものと思われます。どうして、そのような業者がまだ多くいるのかと言いますと、一番の理由は、排出事業者から、廃棄物である物も、そしてお金の処理費もすべて一方通行になっていることがあげられます。要するに、処理業者としては処理も何もしないで、適当に不法投棄などをした方が当然利益になるからであるものと思われます。

【不適正処理業者の具体例】
筆者が、これまで目にしたり、聞いてきた不適正処理業者の一例をご紹介します。
(これはほんの一例であり、他にもまだまだ不適正処理業者の事例は数多くあります。)

事例

詳細

1

マニフェスト交付を1回/月でよいと、排出事業者へ指示 毎週のように廃棄物が排出され、処理業者に搬入されているのにも関わらず、マニフェストの交付は月に1度でよいと処理業者が排出事業者に指示していた。
2 収集運搬業許可を更新し忘れ、結果的に無許可業者に 契約当初は収集運搬許可を取得していたが、許可更新時に許可の更新をし忘れて、無許可業者になっていた。結果として無許可業者への処理委託ということで排出事業者が自治体から呼び出された。
3 広域認定と称した処理の受託

処理業者のアナウンスでは広域認定のスキームのように紹介していたが、実際は認定を受けてはいないことが判明した。

以上の警察庁の事犯事例、並びにこれらの不適正処理業者の事例から学ぶことは、(当社も処理業者の立場でありながらこのようなことを言うのはおかしな話ですが)「処理業者の言うことなどに疑問をもったら疑って確認した方がよい」ということだと思われます。
また、できるだけその処理業者に対して、その根拠なるものを求めることをお勧めします。(リーテムでは本コラムでもそうですが、それを言うところの根拠をできうる限りお示しして、排出事業者様に情報を提供させていただいております。)

廃棄物処理法は、排出事業者に多くの責任を負わせている法律になります。不適正処理の実態が明るみになったら、当然不適正処理を行った処理業者は許可の取り消しなどの処分を受けることになりますが、その処理業者だけの責任にすることはできず、排出事業者も責任を負わなければなりません。

廃棄物を扱う上でのリスクを十分に認識して、こういったケースもあることを頭の隅に入れながら処理業者とお付き合いされてはいかがでしょうか。

(本コラムの著作権はリーテムに帰属しており、リーテムに無断で転用・転載することはできません。)

株式会社リーテム
経営管理部
法務G
坂本裕尚