中国まもなく古紙輸入全面禁止へ

2021年1月から中国がいよいよ古紙の輸入を全面禁止にするようです。世界の古紙最大輸入国の中国が古紙を一切輸入しないとなると、日本を含む古紙輸出国に大きな影響を及ぼします。

 

中国の古紙輸入許可の枠が2021年にゼロに

2017年に始まった中国の国門利剣(ナショナルソード)政策と呼ばれる古紙や廃プラスチック等を含む廃棄物の輸入規制について、今年6月に中国政府は2021年から廃棄物の輸入量をゼロにする意向を改めて発表しています。予告どおりということですね。古紙も例外ではありません

中国税関の資料によると、廃棄物輸入禁止制度前の2016年には約3,140万トンの古紙を輸入していましたが、2017年末に未選別の古紙、低品質の古紙の輸入が禁止されました。その後の古紙の輸入許可量は、2017年に合計2,810万トン、2018年に1,870万トン、2019年には1,090万トンと着実に減少しています。

今年9月1日に中国で「固形廃棄物環境汚染防止法」の改正が施行されました。改正の主旨は古紙輸入の全面禁止の方針を明文化したもので、実施時期の明示はありませんでした。中国製紙協会は、2021年に完全に古紙の輸入許可は廃止されるとみています。

 

どうして中国に古紙を輸出できないと困るの?

なぜ中国の古紙輸入禁止の予定が、古紙関係者を震撼させているのでしょうか。それは、日本では古紙供給が需要を上回っているためです。これまでは国内で消費されない古紙を中国や東南アジア諸国に輸出してバランスをとってきました。なかでも中国向けが輸出量全体の5割以上を占めています。そのため、中国の輸入全面禁止により市場に古紙が余り、日本の古紙供給過多が深刻化する可能性があります。

 

日本で古紙が供給過多な背景

1970年当時に約40%弱だった日本の古紙回収率は2019年には約80%に達しました。 この数字は世界第3位で、世界の古紙の平均回収率を上回っています。また、回収された古紙の再生率は約64%(2019年)です。これほど古紙再生率が高いのは、消費者の「分別」によって、使用済みの紙類の中から品質の高い古紙(製紙原料)を回収することが出来ていることと、古紙を製紙原料に作り上げる古紙問屋やその製紙原料を使いこなす製紙業界の高い技術と努力によるものです。

古紙の回収率と再生率が高い一方で、国内の製紙産業だけでは、古紙から再生した原料を全量使い切れない現状があります。社会全体でペーパーレス化が進んでいるのが理由の一つです。例えばニュースはスマホで見るようになって新聞の購読者数が減りましたし、雑誌や漫画もスマホやタブレットで配信されたものを読むようになりました。また、最近ではコロナ禍で在宅ワークが進みコピー用紙の使用量が減少しているそうです。

 

古紙の余剰は今後どうなるのか

古紙輸入の停止で古紙原料が不足することを心配した中国の製紙業界が駆け込み購入をしたことによって、2018年に一時的に古紙価格が高騰した時期がありましたが、それ以降は価格は大幅に下落し、現在でも低調のままです。古紙回収業者や古紙問屋は原価割れした取引を強いられる厳しい環境に置かれています。

日本を含む古紙輸出国は輸出先の切り替えを進めているそうですが、専門家は、中国の輸入減少量を埋め合わせるほどの需要が他国で高まるまでには相当な時間がかかると予測しています。一部の輸出国では、販売先のない低品質の古紙が埋立処分や焼却処分に回されているケースもあるそうです。

 

編集後記

コロナ禍によるネット通販ビジネスの世界的な拡大によって、古紙のうち、段ボールの需要は今後伸びるという予測等から、今後の古紙市場について希望的な見方をしていらっしゃる業界関係者の方もいます。わたしも今後の動きに大きい関心を寄せています。

 

 

最後に本コラムの内容を1枚にまとめたニュースレターを添付しますので、ご参照ください。
ニュースレター_2020.11

 

令和2年11月26日
株式会社リーテム
サスティナビリティ・ソリューション部
杉山 里恵
(図)加藤 翠

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