ゴーストフィッシング(幽霊漁業)

ゴーストフィッシングという言葉を知っていますか?水中に放出・廃棄・投棄された網や釣り糸等の漁具が海洋生物に危害を与えている現象のことです。海洋プラスチック問題を報じるニュースや記事に添えられた、漁網に絡まったウミガメの写真を見たことのある方は多いと思います。

 

ゴーストフィッシング(幽霊漁業)とは

ゴーストフィッシング(Ghost Fishing)という言葉を辞書でひくと「流失したり海底に沈んだりした漁具により、意図せず長期間にわたって魚介類や海洋生物が捕獲されること。幽霊漁業と呼ばれる」とあります。漁師が去った後、人間の代わりに漁具が漁獲し続けるという意味なのでしょうか。

漁具は海中の岩や激しい潮、魚類の歯、悪天候 等による損傷に耐えるため、金属や耐久性の高い種類の合成樹脂で作られています。ご存じのとおり金属や樹脂は自然環境に残留する素材です。そのため海中に放置された漁具が、長期間かかって自然劣化するか壊れるかするまで、ゴーストフィッシングが続くことになってしまいます。漁業従事者の方々にとっては漁具は生活のための大事な道具であり、漁業で得る魚介類は私たちの食糧でもあります。とは言え、海の生き物たちの受難はとても悲しいことです。

 

カモメの恩返し

被害に遭っているのはウミガメや魚ばかりではありません。海鳥たちもまたしかりです。
筆者の同居人の釣り好きAさんが先日体験した出来事はそのほんの一例です。

Aさんと仲間数人が千葉の館山沖で船釣りをしていたその日、釣果はあまり芳しくありませんでした。魚影を求めて何度か船を移動させていたところ、背中の羽が灰色をしたカモメ(せぐろ鴎)が船のへ先(船の先端部)に舞い降りて来てじっとこちらを見るので、空腹なのだろうと察したAさん達が小魚をかもめの目の前に投げたけれど食べようとしない。それなのに船が移動すると上空を飛び回りながら追いかけてきて、船が止まるとまたへ先に停まる、というのを繰り返しました。不思議に思い、よくよくカモメを観察したら、くちばしと口に、釣り糸と「より戻し」と呼ばれる仕掛けの金具が絡まって巻き付いていたのです。もらった小魚を食べようとしなかったのも、船について来たことにも合点がいきました。Aさん達は魚用の網でカモメをそっと捕えて巻き付いた釣り糸と金具を外してあげました。そうしてカモメが飛び去った後は、それまでのおそまつな釣果が嘘のように一転して、爆釣したそうです。

カモメの恩返し!! かもしれませんが、どうしても手放しでは喜べません。絡んだ釣り糸と金具を外してほしくて釣り船を追いかけてきて人間を見つめていたなんて、なんと切ないことでしょう。

 

ゴーストフィッシングから生物を守りたいけど

釣り具メーカーが、すべての釣り具の材料を生分解性素材に切り替えてくれるといいのですが、釣り具は耐久性を重視するため生分解性素材は向いていないそうです。ソフトワームと呼ばれる疑似餌の一部が生分解性の樹脂で作られている例はありますが、その他の「仕掛け」と総称される道具はどれも金属製か合成樹脂製です。前述の釣り人Aさんによると、高価な仕掛けは海中に失くすことのないように釣り人は気を配るそうですが、仕掛けや道具が安価であれば、気軽に海に捨ててしまうことが多いのが現状のようです。

 

 

海洋に漂う漁具についての国の動き

環境省は、2020年9月のG20環境大臣会合にあわせて作成された「第2次G20海洋プラスチックごみ対策報告書」を11月に発表しました。この中で、日本の海洋プラスチックごみ削減の取り組みの一例として、漁業者が自主的に海ごみを回収した場合はその処理費用を国が負担するという施策を報告しています。また2020年5月から、石川県、千葉県、兵庫県等を含む7地域で漁業者の協力による海底ごみ回収の実証事業を行っています。

参考:第2次G20海洋プラスチックごみ対策報告書

 

最後に本コラムの内容を1枚にまとめたニュースレターを添付しますので、ご参照ください。
ニュースレター_2020.12

 

令和2年12月18日
株式会社リーテム
サスティナビリティ・ソリューション部
杉山 里恵
(図)加藤 翠

 

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