読み解く!PCB特措法(1) ~処分期限の延長~

今回のコラムでは、先日の12月7日に改正、施行されたPCB特措法についてご案内します。
以下は、PCBの基本となる情報から、現状の処理状況や問題点、さらに今後の方向性まで、PCB廃棄物の種類ごとに分かりやすく表しているおりますので、参考になるかと思われます。

PCBとは…

以下のJESCO(日本環境安全事業株式会社)のサイトが参考になるものと思われますので、こちらでご確認ください。簡単に申し上げますと、PCBは毒性が強く食物連鎖などで生物の体内に濃縮しやすく、環境中で分解されにくく長距離を移動して、地球規模での汚染を引き起こしてしまいます。
◆PCBとはどんなもの?
http://www.jesconet.co.jp/business/PCB/pcb_03.html

◆PCBはどのような製品に入っているか…
http://www.jesconet.co.jp/business/PCB/pcb_04.html
(高濃度PCBについて)

微量PCB汚染廃電気機器等とは何か…
http://www.jesconet.co.jp/customer/discount_02.html#p11
(微量PCBについて)

PCB廃棄物の処分期限の延長(本法改正内容)

法改正前のPCB特措法では、平成28年までに処分を完了することとなっていましたが、JESCOでの処分が当初の想定よりも遅れていること、さらに微量PCB汚染廃電気機器等の存在がPCB特措法施行(平成13年施行)後に判明したことにより、平成28年までの処分完了が実質的に不可能となったため、期限が平成39年3月31日までに延長されました。
(期限が平成39年3月となったのは、ストックホルム条約で平成40年までの処分完了を求められているためです。)

PCB廃棄物の種類

PCB廃棄物は、主に以下の3つに分けられます。
①高圧トランス・コンデンサ等(高濃度PCB)
②安定器等、汚染物(高濃度PCB)
③微量PCB汚染廃電気機器等

高濃度PCB(トランス、コンデンサ、安定器等)の処理

◆現状は…
高濃度PCBについては、JESCOのみの処理となっており、以下のエリアごとに区分けされています。従い、現状のルールですと、エリアを超えての処理はできないものとなります。
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また、以下のサイト内にもあるように、エリアをまたぐことはできないにも関わらず、そのエリア内のJESCOの事業所では処理することができないものもあります。

(詳細は以下のサイト参照)
http://www.jesconet.co.jp/business/contents/progress/index.html

具体的には、例えば安定器等については、現在は北九州のみしか処理できません。従い、例えば東京都内に安定器等があった場合には、エリアをまたぐことはできないため、処理したくてもできないという状況が発生しております。

◆今後は…
今後はエリア内のJESCO事業所でも処理体制を確保するとの推進策を環境省の方で考えていたり、北九州事業所では自エリア内の処理終了の見通しがついた時点で、全国の処理を受けるということも検討されているとのことです。

以下は、「PCB廃棄物適正処理推進に関する検討委員会」の報告書の一部になり、「処理推進策」にそのことが書かれております。

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http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=20514&hou_id=15598

微量PCB汚染廃電気機器等の処理

◆現状は…
上記の高濃度PCBの処理はJESCOに一本化されているのに対して、微量PCBの処理は都道府県か国が認定した民間処理施設による処理となります。
現在の認定施設は以下のとおりです。
①財団法人愛媛県廃棄物処理センター(愛媛県)
②光和精鉱株式会社(福岡県)
③株式会社クレハ環境(福島県)
④東京臨海リサイクルパワー株式会社(東京都)
⑤エコシステム山陽株式会社(岡山県)
⑥エコシステム秋田株式会社(秋田県)
⑦神戸環境クリエート株式会社(兵庫県)
⑧株式会社富山環境整備(富山県)
(認定日順)

こちらも各処理施設ごとに処理できるもの、できないものがありますので、処理できるところに委託するしかありません。
(詳細は以下のサイト参照)
http://www.env.go.jp/recycle/poly/facilities.html

また、現状はPCBの絶縁油そのもののみの処理施設が多いため、PCBが入っている筐体の処理ができないものとなってしまい、結果的に微量PCBの処理が滞ってしまっております。

◆今後は…
微量PCBについては、処理施設を今後増強していくことや、筐体ごとの処理が可能な施設の認定を増やしていくことを環境省は考えております。

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http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=20514&hou_id=15598

 

法改正通知(平成24年12月7日)
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=16073

 

この他、高濃度についてはJESCOに委託する前に事前予約などの手続きが必要だったり、JESCOの各事業所においても2~3年待ちの状況であったり、また、微量については、濃度の測定が求められたりしますので、普通の産業廃棄物の処理委託のように容易にはいかないことも多々あります。

処理料金についても、高濃度は29,400円/kgとの料金、微量については低料金での処理となっているようですが、収集運搬費は高濃度、微量ともに結構高いものとなっております。

廃棄物処理法では、産業廃棄物の処理責任を排出事業者に求めており、PCB特措法ではPCBの保管事業者に処理責任を求めております。前述のようになかなか高額な処理料金となっているため、多くの保管事業者は自己負担となることに納得がいかないと思っていらっしゃるかもしれませんが、PCBは毒性の強いものとなりますので、適切に保管されて、財政面で少々余裕のあるときに処理委託されることが望まれます。

◆リーテムのPCB廃棄物処理支援サービス

https://www.re-tem.com/service/service_list/pcb/

平成24年12月12日
株式会社リーテム
マネジメント推進部
坂本裕尚