読み解く!廃棄物処理法(10) ~事前協議制度~

[事前協議制度についての2023年5月掲載の最新コラムも併せてご覧ください] https://www.re-tem.com/ecotimes/column/may2023/

 

今回のコラムでは、県外産業廃棄物の県内処理業者へ処理委託する際の事前協議制度について、筆者が直近で調べた情報などを基にご案内したいと思います。

事前協議制度とは…

産業廃棄物が都道府県を超えて広域的に処理することは法律では禁じられてはいませんが、県外から産業廃棄物を持ち込む際に、条例等でその自治体独自の規定を設けている都道府県や政令市が数多くあります。
それは都道府県を超えて産業廃棄物を搬入する際には、事前に自治体と協議を行うことや届出などを義務づけているというものであり、一般的に「事前協議制度」と呼ばれています。

事前協議制度のある自治体一覧

まずは事前協議制度のある自治体は以下のとおりです。
(色つきの自治体が本制度を採用)
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そもそもなぜ事前協議制度があるのか?

前述の説明にもありますとおり、事前協議の制度は各自治体での条例や要綱などにより定められています。
従い、各自治体それぞれの考えにより規定されているのですが、多くの自治体は、以下の理由により事前協議制度が規定されているものと思われます。

◇県外搬入の産廃量を把握しておきたいから
◇県内の最終処分場を守りたいから
◇県外の産廃を多く持ちこまれたがために県内処理会社の不適正処理を招きたくないから
◇(政令市の場合)県が本制度を導入しているから
◇隣接する都道府県が本制度を採用しているから

また、上表から見てとれるのが、東京都や大阪府など大都市の自治体については、本制度を採用していないということです。この理由は、おそらくはその大都市が他県と比べて非常に多く廃棄物を排出しているのに、自分のところへの持ち込みについて規制をかけるというのは、筋が通らないからではないでしょうか。実際にこれらの大都市へのヒアリングでもそのような回答を得られました。

事前協議制度の位置づけ

前段のご説明にもあるとおり、事前協議制度は、各自治体の条例、又は要綱等で規定されています。筆者が調べた情報によると条例よりも要綱で規定されている方が多いという状況です。

◇条例と要綱の違い
では、条例と要綱、何が違うのかと言いますと、以下のとおりとなります。

違い

性格

法的拘束力

条例

地方公共団体が自治立法権に基づいて成立する法規の一形式

法規

あり

要綱

法律、条令、規則等の法規とは異なり、行政機関の内部規定

内規

なし(※)

※場合により、法的拘束力がある場合もあります。
◇ある場合…
要綱が上位の法令を補完するものであれば、上位の法令と一体となって法規たる性質を有するとされています。
◇ない場合…
国民の権利義務に関係のない、行政機関内部の決まりごとの場合

なお、「要綱」と「要項」を区別しているところもあります。
◇要綱…内部の指針・基準のうち重要な事項をまとめたもの
◇要項…内部の指針・基準のうち細目的なものをまとめたもの

例えばこんな事前協議制度

本制度については、各自治体様々な制度がありますし、まだ調査中ですのですべてを紹介することは今回はできませんが、一例として以下のような制度があります。
◇県外産廃の搬入の理由、処理方法を自治体と協議し、認められた場合は搬入が可能 …多くの自治体が採用
◇届出のみ (自治体との協議は必要なし) …岐阜県、愛知県など
◇直接埋立のみ …宮城県、長野県など
◇5t以上、10t以上などの一定量以上の場合 …山口県、仙台市など
◇やむを得ない場合のみ搬入可 (原則不可) …徳島県、宮崎県など

もし、事前協議を行わなかったら…

◇条例の場合…条例であれば、法的拘束力があり、場合によっては罰則もありますので、本制度のとおり運用する必要があります。
◇要綱の場合…要綱の場合で、法的拘束力がない場合、事前協議を行わなくてもよいのかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、結論から言うとそうではないものと思われます。要綱については法的拘束力がないものの、行政指導から始まり、勧告、公表と、行政は厳しい対応をしていきますので、要綱であってもそのルールを守る必要があるものと思われます。

 

これまで述べたとおり事前協議制度は、条例や要綱などで規定されていますので、排出事業者がすべての関係する自治体のルールを知り得るということはなかなかできないというのが正直なところではないでしょうか。
例えば建設廃棄物の場合など、解体現場などが日本全国の様々なところで発生するため、その度に事前協議制度について調べるのはとてもとても手間であるため、なかなか周知されていないのが現実ではないでしょうか。
従い、これらの情報をより多くの排出事業者に伝えるのがリーテムの役割であるとも考え、本コラムに掲載した次第であります。

全国には多くの処理業者が存在しておりますが、この事前協議については認識してはいるものの、排出事業者に正確にその情報を伝えているかと言いますと、なかなか伝えきれていないのが現状です。ある建設会社は多くの処理業者と付き合っていますが、この制度について伝えてきた処理業者はごくわずかであると言っておりました。
(まあ実際にもこれらの事前協議を行う責任は排出事業者にあると規定している自治体が多くありますので、確かに伝えなくてもよろしいと言えばよろしいかもしれませんが…)

リーテムの場合は、これらの情報をお客様に正確に伝えて必ず事前協議を行っていただくようお願いしております。(とは言え、茨城県の特例で優良認定事業者は事前協議が不要になりましたので、最近ではそのようなお願いは必要なくなってしまいました。。。)

また、本コラムを掲載しようと思った当初は、本制度の詳細な情報、例えば、それぞれの自治体で、条例なのか要綱なのか、罰則があるのか、処理量の実績報告があるのか、などなど掲載しようと思ったのですが、なにしろ111の自治体の調査をしなければならないため、時間がかかってしまっている状況です。取り急ぎ今回は以上の情報をお伝えすることにします。これ以上の詳細な情報につきましては、また改めて本コラムでご紹介できればと思います。

(本コラムの著作権はリーテムに帰属しており、リーテムに無断で転用・転載することはできません。)

平成24年11月16日
株式会社リーテム
マネジメント推進部
坂本裕尚