2050年「ゼロ」目標 代替フロン

ご存知のとおり、日本は「温室効果ガスを2030年までに46%削減(2013年比)、2050年にゼロにする」 を国の目標にしています。「2050年カーボンニュートラル」と聞くと、 多くの人がまず頭に浮かべるのはCO2の削減かも知れませんが、CO2以外の温室効果ガスも削減対象とされています。代替フロン類、メタン、一酸化二窒素がそうですが、このうち、代替フロンの排出状況や、2030年、2050年の目標と施策について整理してみました。

 

代替フロンとは? フロンとの違いは何か

フロンガスは、人工的に作った炭素とフッ素、塩素、臭素などの化合物です。かつては冷蔵庫やエアコンなどの冷媒、プリント基板の洗浄剤、スプレーの噴射剤などに広く使われ、大気中に放出されていました。 1970年代になるとフロンガスによるオゾン層の破壊が指摘されました。オゾン層の破壊による人への健康被害や生態系への悪影響が懸念され、国際的に議論されるようになりました。その結果、オゾン層を破壊するフロンガスは「特定フロン」とされ、国際的に大気放出が禁じられており、段階的に製造が中止されています。 CFC(クロロフルオロカーボン)やHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)が特定フロンにあたります。

代替フロンとは、「特定フロン」を代替するために開発された、オゾン層を破壊しないフロンです。 代替フロンは、オゾン層を破壊しないものの、CO2の数十倍から10,000倍以上の強い温室効果をもたらします。このため国は、HFC(ハイドロフルオロカーボン)、 PFC(パーフルオロカーボン)、SF6(六フッ化硫黄ガス)、NF3(三フッ化窒素)の、4種の代替フロンの削減を重要課題と捉えています。諸外国でも代替フロンの規制が行われています。

 

代替フロンの削減目標と日本の排出状況

現在最も普及している代替フロンであるHFCは、モントリオール議定書のキガリ改正(=2016年10月にアフリカのルワンダの首都キガリで開催したモントリオール議定書締約国会議における改正のこと)によって、先進国は2036年までに段階的に85%削減、途上国は2045年頃までに段階的に80%削減することが決定しています。

日本の代替フロン等4ガスについての目標は、2030年までに2013年度比で32%削減し、2050年にはゼロにするというものです。(経済産業省、環境省 2021年代替フロン等4ガスの削減対策の発表時点)

「2021年度温室効果ガス排出・吸収量(確報値)概要」環境省、国立環境研究所の資料より筆者作成

https://www.env.go.jp/content/000129138.pdf

 

今年4月に環境省が公表した情報によると、2021年度の代替フロン等4ガスの排出量は2013年度に比べ66.7%増加しています。主な要因は冷媒に使用するHFCが急増したことで、全体の9割以上を占めています。一方で、HFC以外の3種の代替フロンは2005年以降減少しています。

代替フロンを「2030年までに2013年度比32%削減」 という国の目標到達のためには、 2030年までにHFCの排出量を2021年度の約2分の1に減らさないとならないことになります。現時点では達成が危うい状況ではないでしょうか。

従来はエアコンが必要なかった北海道でも異例の猛暑が続いています。もはや日本ではエアコンは生活に欠かせないインフラになっていると言えるでしょう。世界に目を向けると、人口増加や、開発途上国の経済発展によって、エアコンの稼働台数や冷凍・冷蔵倉庫の数は増え続けていると言われています。冷媒を使う代表的な製品の一つはエアコンです。代替フロンではなく、ノンフロン冷媒などを導入した、GWPの低い(※備考)製品の開発・販売が急がれています。

 

※ GWPとは
地球温暖化係数(=Global Warming Potential)の略で、 CO2が温室効果をもたらす度合を1として、他の温室効果ガスの温室効果をもたらす度合を対比で示した係数のこと。

日本の代替フロン削減の施策

前述のような状況を踏まえて、国が発表している、代替フロン等4ガス削減に向けた施策は次のとおりです。

環境省フロン対策室経済産業省オゾン層保護等推進室https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/chikyu_kankyo/ondanka_wg/pdf/004_04_03.pdf

 

 編集後記

冷蔵庫やエアコン、住宅用断熱材などの製品には、環境影響度や地球温暖化係数を示した「フロンラベル」の表示がJIS(日本産業規格)により義務付けられています。私たち消費者は、購入前にフロンラベルで情報を確認し、温暖化対策に繋がる製品を選ぶことが大切ですね。

最後に本コラムの内容を1枚にまとめたニュースレターを添付しますので、ご参照ください。
ニュースレター_2023.8

 

令和5年8月29日
株式会社リーテム
サーキュラーエコノミー推進室
杉山 里恵
(図)加藤 翠

 

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