産廃処理施設の監査はなぜ必要?

新型コロナウィルスの感染が拡大と収束を繰り返していた約3年の間、自社廃棄物の委託先である産廃施設の監査をなかなか計画通りに実現できなかった企業は少なくないことでしょう。「ビデオ通話システムを利用した遠隔での監査」を選択なさる企業もいる一方、長いこと保留していた監査を今年に入ってから再開された企業も多いのではないでしょうか。

 

廃棄物処理施設の監査は法律上の義務なの?

廃棄物処理法において、「廃棄物処理の状況の確認」は、排出事業者の努力義務とされていて、実施は義務づけられてはいません。ですが、地域によっては、条例や要綱の中で「実地確認」を義務づけている(例:年に一回以上 など)都道府県や政令市があります。例えば、北海道、岩手県、宮城県、静岡県、盛岡市、相模原市、浜松市がその例ですが、他にもあります。そのため排出事業者は、自社の排出事業場のある自治体のルールをホームページ等で確認しておくことが大事です。

廃棄物処理法第 12 条第 7 項
事業者は、前二項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、当該産業廃棄物の処理の状況に関する確認を行い、当該産業廃棄物について発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならない。

 

 

条例等による義務がなければ監査はしなくてよいか

所轄の自治体が監査を義務づけていない場合には、「法律上は“履行義務”ではないのだし、ウチは監査を見送っても差し支えないだろう」とお考えになる企業の担当者様もおいでかと思います。

しかしながらそんなことはありません。所轄の自治体が義務と定めていなくても、定期的に、委託先の産廃処理施設を訪問して監査することは大切です。なぜなら、廃棄物の運搬や処理を委託した相手が、もしも廃棄物処理法の違反行為で書類送検されたり、報道されるなどの不測の事態が起きた時に、排出事業者を、風評被害や措置命令(=行政が、違法行為により汚染した土壌の現状回復や、不法投棄された廃棄物の撤去などを命ずること)から守ることに繋がるためです。日頃から処理状況を確認して不適正防止に努めている排出事業者と、そうでない排出事業者とでは、有事の際に行政担当者が受ける心証は異なると考えられます。

また、監査を通して、違法に繋がる運用状況を見つけて改善依頼をすることによって、委託相手の違法行為を未然に防止する効果もあります。

 

 

廃棄物処理の法令違反は知らぬ間に起きる

産業廃棄物の処理委託契約は、契約期間を「自動更新」にするケースが多いことから、処理委託契約を締結した後は、引取り依頼、マニフェスト伝票のやりとり、料金の請求・支払いの一連の流れがルーティン化します。それは事務処理の効率上は望ましいことですが、その一方で、排出事業者と処理事業者との間のコミュニケーションの不足が起き易いという一面もあります。コミュニケーションが無いと、委託相手がどんな会社で、どんな経営をしているのか、環境汚染のない適正な廃棄物処理をしているかどうか、また、法令のルールを守っているのか等を、把握することは難しいと言えます。すべての廃棄物処理事業者が自社のウェブサイトを持ち、経営姿勢や業務内容などを公開しているとは限らないためです。

また、委託相手の法律の知識不足や社内教育の不足によって、知らず知らずのうちに法に抵触している、ということも起き得ます。必ずしも悪徳業者だけが法に触れるというわけではありません。

 

産廃施設監査をどのタイミングで行うか

初めて廃棄物処理を委託する相手の場合は、産廃処理委託契約を締結する前に、監査をすることにより、これから委託する予定の廃棄物の種類や数量、特徴と、候補の処理事業者の許可内容、処理設備がマッチしているかどうかを許可証を見て確認します。産廃処理委託契約の締結後には、委託する量や頻度に応じて、年に1度あるいは2年に1度 等、自社のルールを決めて、定期的に監査をすることをお薦めします。時の経過と共に、排出事業者側もしくは処理事業者側の事情によって、締結した当時の契約内容の一部に変更が起きているケースが少なくないためです。それらの変更を契約書類に反映しないまま委託取引を続けると、法令違反に該当したり、当事者間のトラブルに繋がる可能性があります。

 

編集後記

新型コロナウイルスの感染が拡大していた時期には、実地確認を義務付けている一部の自治体でも、感染拡大の影響を理由に、実地確認以外(オンラインによる視察、写真、ヒアリング)の方法を認める自治体が複数ありました。新型コロナウイルスの流行をきっかけに、企業のテレワークや、オンラインセミナー等、IT機器を利用した遠隔型の業務やサービスが一気に拡がりましたが、産廃処理施設の監査についても、遠隔型が今後、企業の選択肢として定着するのか、関心のあるところです。

当社は、排出事業者様による、処理委託先施設の監査の実施をご支援しております。また、企業の廃棄物管理ご担当者様向けに、廃棄物施設監査の実務と大事なポイントに関するオンライン研修・対面セミナーを行っております。

ご関心のある方は、下記リンクから、ウェブページをご覧ください。

 

最後に本コラムの内容を1枚にまとめたニュースレターを添付しますので、ご参照ください。
ニュースレター_2023.3

令和5年3月28日
株式会社リーテム
サーキュラーエコノミー推進室
杉山 里恵
(図)加藤 翠

 

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