前回のコラムでは、放射性物質汚染対処特措法の「廃棄物の処理」に限定し、特定廃棄物、指定廃棄物などの処理などに解説させていただきましたが、今回のコラムでは、前回ではお伝えできなかった「除染」について解説させていただきます。(一部、平成24年2月28日現在の情報含む)
また、わかりやすく解説させていただくために、一部Q&A形式も取り入れてご案内させていただくとともに、本特措法以外にも平成24年1月26日に環境省が発表した「除染特別地域における除染の方針(除染ロードマップ)」についても少し触れてご紹介できればと思います。
除染については、
① 除染関係の地域指定
② 除染目標
③ 除染方法
④ 除染に伴う廃棄物の取り扱い
などがあげられると思われますので、この解説と、前書きにもあります、
⑤ 除染特別地域における除染の方針(除染ロードマップ)
についても、簡単にご紹介させていただきます。
≪ ① 除染関係の地域指定 ≫
除染関係の地域指定としては、
a) 除染特別地域
b) 汚染状況重点調査地域
の2つの地域に区分され、以下の104の地域が指定されています。(平成24年2月28日現在)
除染特別地域 |
福島県内の11の市町村 |
汚染状況重点調査地域 |
・岩手県内の3の市町村 ・宮城県内の9の市町村 ・福島県内の41の市町村 ・茨城県内の20の市町村 ・栃木県内の8の市町村 ・群馬県内の12の市町村 ・埼玉県内の2の市町村 ・千葉県内の9の市町村 |
Q1…a) 除染特別地域と、b) 汚染状況重点調査地域は何が違うのですか?
a) 除染特別地域…国が土壌等の除染等の措置等を実施する必要がある地域(警戒区域、計画的避難区域)
b) 汚染状況重点調査地域…その地域内の事故由来放射性物質による環境の汚染の状況について重点的に調査測定をすることが必要な地域
Q2…なぜこれらの地域が指定されたのですか?
a) 除染特別地域…警戒区域、計画的避難区域と同じ地域が指定
b) 汚染状況重点調査地域…その地域の平均的な放射線量が0.23μSv/h以上の地域を含む市町村を、汚染の状況について重点的に調査測定をすることが必要な地域として国が市町村単位で指定
Q3…なぜ0.23μSv/hなのですか?
追加被ばく線量を年間1ミリシーベルトに抑えるという目的で、以下の考え方に基づき、0.23μSv/hと設定
(0.23μSv/hの内訳)
・自然界(大地)からの放射線量:0.04μSv
・事故による追加被ばく放射線量:0.19μSv
◇1日のうち屋外に8時間、屋内(遮へい効果(0.4倍)のある木造家屋)に16時間滞在するという生活パターンを仮定
・1時間当たり0.19マイクロシーベルト ×(8時間 + 0.4×16時間)× 365日
= 年間1ミリシーベルト
≪ ② 除染目標 ≫
・長期的な目標…追加被ばく線量が年間1ミリシーベルト以下を実現
・2年間の目標…一般公衆の年間追加被ばく線量を約50%減少した状態を実現することなど
≪ ③ 除染方法 ≫
◇追加被ばく線量が比較的高い地域
・表土の削り取り
・建物の洗浄
・道路側溝等の清掃
・枝打ち及び落葉除去等の除染等
・子どもの生活環境の除染等を行うこと
◇追加被ばく線量が比較的低い地域
・周辺に比して高線量を示す箇所があることから、子どもの生活環境を中心とした対応を行う
・地域の実情に十分に配慮した対応を行う
≪ ④ 除染に伴う廃棄物の取り扱い ≫
a) 除染特別地域内は、警戒区域、計画的避難区域と同じ区域であるため、特定廃棄物の対策地域内廃棄物として取り扱われますので、前回のコラムでご案内しましたとおり、国が保管や処分等を行うことになります。
b) 汚染状況重点調査地域における除染に伴う廃棄物については、8,000Bq/kgを超えるなどして前回のコラムの指定廃棄物の指定を受けた場合には、その指定廃棄物として取り扱われますので、前回のコラムでご案内しましたとおり、国が保管や処分等を行うことになります。
それ以外の除染に伴う廃棄物については、以下のとおり取り扱われます。(特定廃棄物、指定廃棄物以外)
工程 |
除染に伴い生ずる廃棄物 |
除染に伴い生ずる除去土壌 |
現場保管 | 除染廃棄物現場保管基準 (特措法41条4項) 除染廃棄物関係ガイドライン |
除去土壌現場保管基準 (特措法41条1項) |
運搬 | 廃棄物運搬基準 (廃棄物処理法6条の2、12条等) |
除去土壌運搬基準 (特措法41条1項) |
保管 | 廃棄物運搬基準 (廃棄物処理法6条の2、12条等) |
除去土壌保管基準 (特措法41条1項) |
中間処理 | 廃棄物処分基準 (廃棄物処理法6条の2、12条等) 特定一廃、特定産廃の場合、上記に加え、特別処理基準(特措法23条) 特定一般廃棄物、特定産業廃棄物関係ガイドライン |
除去土壌中間処理基準 (特措法41条1項) |
保管 | 廃棄物運搬基準 (廃棄物処理法6条の2、12条等) |
除去土壌保管基準 (特措法41条1項) |
埋立処分 | 廃棄物処分基準 (廃棄物処理法6条の2、12条等) 特定一廃、特定産廃の場合、上記に加え、特別処理基準(特措法23条) 特定一般廃棄物、特定産業廃棄物関係ガイドライン |
除去土壌埋立処分基準基準 (特措法41条1項) |
以上、放射性物質汚染対処特措法の除染関係について、解説させていただきました。
この情報は、以下の環境省サイトの情報を取り纏めたものとなります。
<原子力発電所事故による放射性物質対策>
http://www.env.go.jp/jishin/rmp.html
<放射性物質汚染対処特措法に基づく汚染状況重点調査地域の指定について~平成24年2月24日~>
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=14879
<基本方針>
http://www.env.go.jp/jishin/rmp/attach/law_h23-110_basicpolicy.pdf
<除染廃棄物関係ガイドライン(平成23年12月第1版)>
クリックしてhaikibutsu-gl04_ver1.pdfにアクセス
<除染等の措置に係るガイドライン(平成23年12月第1版)>
クリックしてjosen-gl02_ver1.pdfにアクセス
≪⑤除染特別地域における除染の方針(除染ロードマップ)≫
<避難指示解除準備区域(※)となる地域> ※20mSv/年以下
・平成24年内を目途に、10~20mSv/年の地域(学校等は5mSv/年(1μSv/時)以上)の除染を目指す。
・平成25年3月末までを目途に、5~10mSv/年の地域の除染を目指す。
・平成26年3月末までを目途に、1~5mSv/年の地域の除染を目指す。
・地域の具体的な目標値は、モデル事業の結果等も踏まえ、計画に反映する。
・10mSV/年以上の地域は、当面、10mSv/年未満を目指す。学校は再開基準である1μSv/時以下を目指す。
<居住制限区域(※)となる地域> ※20~50mSv/年
・平成24~25年度にかけての除染を目指す。
・20~50mSv/年の地域を段階的かつ迅速に縮小することを目指す。
<帰還困難区域(※)となる地域> ※50mSv/年超
・当面は、モデル事業を実施。
この情報は、以下の環境省サイトの情報を取り纏めたものとなります。
<除染特別地域における除染の方針(除染ロードマップ)>
http://www.env.go.jp/jishin/rmp/attach/josen-area-roadmap.pdf
<除染特別地域における除染の方針(除染ロードマップ)のポイント>
http://www.env.go.jp/jishin/rmp/attach/josen-area-roadmap_point.pdf
以上が、放射性物質汚染対処特措法の除染関係の抜粋解説となりますが、ニュース等でも多く報道されているとおり、例えば8,000Bq/kg以下となっても処分業者が受け入れてくれないなど、問題がまだまだ多くあるものと思われます。
これらの問題についての進展、または環境省からの通知等がありましたら、また本コラムで掲載していきたいと思います。
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