温暖化対策に進捗あり

近年、日本の各地で大雨や、記録を塗り替える猛暑などが続いています。これらの異常気象は温室効果ガス排出量の増加による地球温暖化が原因のひとつと考えられています。日本は年間約12億トンを超える温室効果ガスを排出しており、 2050年にカーボンニュートラルの実現、また、2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目標に、国全体で取り組んでいます。身近な温暖化の影響と、その対策はどの程度進んだのでしょうか。

 

大雨と猛暑 “極端現象”

気象庁によると、大雨の年間発生回数は増加しており、より強度の強い雨ほど増加率が大きくなっています。1980年頃と比較して、1時間降水量80mm以上、3時間降水量150mm以上、日降水量300mm以上などの強い雨は、約2倍程度に頻度が増加しています。

気象庁の全国約150地点の気象台や観測所のうち、ほとんどの観測所で長期的な気温の上昇が確認されています。都市部では、地球温暖化にヒートアイランド現象が加わり、全国平均を上回る割合で上昇しています。都市部には木や植物からの熱の蒸散が少なく、建物や地面からの輻射熱や、人工排熱(人間活動で生じる熱)があるためです。

この変化を受けて日本気象協会は、最高気温40度以上の日を「酷暑日」、最低気温30度以上の夜を「超熱帯夜」という新しい呼称を昨年8月に発表しました。

 

海水温の上昇

日本近海における、2022年までの約100年間の海域平均海面水温(年平均)の上昇率は、+1.24℃/100年で、これは、世界全体で平均した海面水温の上昇率(+0.60℃/100年)よりも大きい値です。また日本の気温の上昇率(+1.30℃/100年)とほぼ同程度です(令和5年3月6日 気象庁発表より)。100年の間に、陸も海も暖かくなったということになります。

海の温度は、季節風の強さや潮の流れの変化などの複雑な要素に、地球温暖化の影響が重なり合って、10~20年のスケール単位で変動するもので、海水温の上昇の原因は地球温暖化だけではないようです。

 

日本近海の全海域平均海面水温(年平均)の平年差の推移(気象庁)

※平年値は1991年〜2020年の30年間の平均値

 

環境省「地球温暖化対策計画」2021年度の進捗状況

今年6月に環境省は、2021年度における国の「地球温暖化対策計画」の進捗を点検した結果を公表しました。2021年度の温室効果ガス排出量は11億7,000万トンで、前年度比で2.0%の増加。2013年度比では16.9%減少(2億8,530万トン減少)。一方、2021年度の温室効果ガス吸収量は4,760万トンで4年ぶりの増加です。「一定の進捗が見られる」という点検結果を踏まえて、環境省は今後、同計画に掲げられた対策・施策を一層推進し、引き続き、厳格な点検を行うとのことです。

(環境省 https://www.env.go.jp/press/111120_00003.html

 

2030年度目標に向けた進捗

 

地球温暖化対策推進本部資料より

 

傘差し登下校

ここ数年、夏の晴れた朝に、雨傘をさして登校する子供達を見るようになりました。初めて見た時には少し驚きましたが、朝から気温が高く、肌を刺すような強い日差しが照る夏の間は、日傘を差しての登校はむしろ正しいと感じます。地球温暖化の影響を身近に感じる例です。

調べてみたところ、埼玉県熊谷市立の小学校では、2020年から熱中症とコロナ対策の両立を目的に、雨傘を活用した「傘差し登下校」を実施しています。2022年には市がオリジナルの晴雨兼用傘を作って市内の児童に配布したとのことです。ほかに、兵庫県明石市は教育委員会が、市内の各学校に日傘使用を推奨するよう通知したという例もあります。

 

 

脱炭素に向けた COOL CHOICE(賢い選択)ポータルサイト

脱炭素の普及啓発のために環境省が運営する、COOL CHOICE(クールチョイス)というサイトがあります。温暖化情報や、脱炭素に向けた賢い選択を発信しています。個人ができることの提案「ゼロカーボンアクション30」、クイズに答えながら温暖化を学べる「チャレンジ!地球温暖化クイズ」、女子高生キャラクター「君野イマ」と「君野ミライ」の動画など、興味をそそるコンテンツが掲載されています。夏休み中のお子さんと一緒にサイトをのぞいてみては如何でしょうか。

 

COOL CHOICE

https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/about/

ゼロカーボンアクション30

https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/zc-action30/

チャレンジ!地球温暖化クイズ

https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/quiz/

各地の気候変動の影響(動画)

https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/weather/

 

 

編集後記

この先、体温を上回るような過酷な暑さが、当たり前になることを想像するとツラいです。2030年、2050年の目標到達のために、企業の努力に頼るだけでなく、個人ができる“賢い選択”を積み重ねていく必要があることを認識しました。末筆ながら、この度の豪雨災害で被害を受けられました皆さまにお見舞い申し上げます。一日も早く復興がなされますことを心よりお祈り申し上げます。

 

最後に本コラムの内容を1枚にまとめたニュースレターを添付しますので、ご参照ください。
ニュースレター_2023.7

 

令和5年7月31日
株式会社リーテム
サーキュラーエコノミー推進室
杉山 里恵
(図)加藤 翠

 

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